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「八句連歌」「雲林院」

第十一回日経能楽鑑賞会  2017年6月

老夫婦ら大人が集まった感じの、国立能楽堂・正面で9000円。休憩を挟み2時間半。
まず狂言「八句(はちく)連歌」。シテ(借り手)は和泉流の最高峰、人間国宝の野村萬が生き生きと。アド(貸し手)で次男・九世野村万蔵と、互いに「萬」「万蔵」と呼び合うのが面白い。シテはアドの連歌仲間から金を借りっぱなしなので、言い訳をしておこうと家を訪ねる。大蔵流だと、アドがシテを訪ねる設定とか。今回の方が誠実で、気持ちがいいかも。
アドは当初「また借りに来たか」と、扇で顔を隠して居留守を使うけど、シテが言付けた、庭の花にちなむ発句が面白いので、急いで姿を現す。
そこから風雅な歌の応酬となって、誉めたり意見したり。歌の文句にひっかけて、借金をめぐる駆け引きもあり、最後はアドが借状を渡してチャラにしちゃう。シテはいったん固辞するものの、アドが借状をひっこめかけると、慌てて受け取って笑わせる。
いつの世も、カネの貸し借りは世知辛いものだけど、「笠碁」ばりの同好の士の関係が微笑ましい。

休憩を挟んで能観世流「雲林院」(世阿弥作)。桜の花の下、伊勢物語の2枚目・在原業平が夢に現れて、二条の后(きさき)との禁断の逃避行を物語る。実に優美で、色っぽいなあ。前シテ老人と後シテ業平の霊は、お待ちかね人間国宝の名手、梅若玄祥。あらかじめロビーで参考揺本を買ってみたら、詞章から衣装、仕舞まで、よくわかって面白かった!
前半は伊勢物語ファンのワキ芦屋公光(平安後期の歌人がモデルらしく、芦屋には公光町という地名や祠があるそうです)が、夢のお告げで京紫野の雲林院(後の大徳寺塔頭。1707年に再建、こちらも地名になっている)を訪ねる。満開の桜を手折ろうとして、現れたシテと古歌をひきつつ、やりとりした後、「花を惜しむも乞うも情あり」と合意しちゃう。優雅です。
シテが「昔男となど」と、自ら業平だと強く示唆して去り、アイ狂言へ。これは謡本とは別なんですね。
後半はワキの夢に現れた若々しい美男姿のシテが、情熱的に恋を回想する。「緋の袴」「藤袴」の鮮やかな色彩感、裾をちょっと持ち上げたり、「降るは春雨か落つるは涙か」と扇をかざしたりする仕草に、繊細な色気が漂う。大詰めは太鼓入りの序の舞で盛り上がりました~

玄祥さんは満70歳の来春、祖父らの隠居名「梅若実」を四代として襲名するとか。でもまだまだチャレンジ精神旺盛とのことで、嬉しいです。地謡で梅若紀彰も登場。

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