« ハムレット | トップページ | 不信 »

エレクトラ

りゅーとぴあプロデュース「エレクトラ」  2017年4月

ソポクレスらのギリシャ悲劇に基づく笹部博司りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)芸術監督の上演台本を、鵜山仁が演出。救いがたい憎しみの連鎖を、意外にあっけらかんと描く。これが古典というべきか。幅広い観客が集まった世田谷パブリックシアター、中央あたりで8500円。休憩を挟み3時間弱。

古代ギリシャ・アルゴスのアガメムノン(麿赤兒)はトロイア戦勝利のため、長女イビゲネイアを犠牲にする。それに傷ついた妻クリュタイメストラ(白石加代子)が夫を殺害。ファザコン気味の次女エレクトラ(高畑充希)は、母と愛人アイギストス(横田栄司)を激しく憎み、逃亡先から戻った愛する弟オレステス(村上虹郎)とともに復讐を果たす。トアスに逃れたオレステスは、実は生きのびて巫女となっていたイビゲネイア(中嶋朋子)と再会。姉弟たちは恨みの克服へと踏み出す。

一家が次々に悲劇をおこす愚かさは、観たばかりの「ハムレット」はもちろん、現代社会にも通じる。3面記事から国際紛争まで、人は2200年以上前からちっとも賢くなっていない。
一方で登場人物の極端な言動には、思わず笑いがもれるし、終盤で女神アテナ(白石が2役で)が強引に皆を諭しちゃうカタルシスは、なんだかお手軽な印象も。ギリシャ悲劇を観るのは、2015年に同じ鵜山仁演出「トロイラスとクレシダ」以来まだ2回目だけど、理屈以前の昔話の風情があるなあ。

照明を落とした丸いステージの中央に、前半は宮殿の柱、後半は女神像を置いただけのシンプルなセット。ベテランの白石、麿(意外に初見)、そして横田、中嶋がたっぷり存在感を示す。特に横田は、いつも通り声が朗々として愛嬌もあってさすがだ。
この手練れたちに、若い2人がぶつかる構図が魅力的。タイトロールの高畑は、膨大なセリフと激しい感情の振幅、飛んだり跳ねたり歌ったりと大活躍だ。なにしろ鳳蘭や大竹しのぶが演じてきた役だもんなあ。声音が暑苦しくなく、リズム感もあって強靭だけど、色気は薄いかも。
昨年末の「シブヤから遠く離れて」で注目した村上は、弱々しいながら透明感を発揮して目をひく。唯一常識的な末娘クリュソテミスには初舞台の二村紗和。作曲と下手での打楽器演奏は芳垣安洋、高良久美子。

20170422_006

« ハムレット | トップページ | 不信 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: エレクトラ:

« ハムレット | トップページ | 不信 »