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ハムレット

ハムレット  2017年4月

2015年に蜷川幸雄演出で観た悲劇を、「レ・ミゼラブル」などで知られ、英ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)で名誉アソシエイト・ディレクターも務めるジョン・ケアードの演出で。上演台本はケアードと今井麻緒子(松岡和子訳に基づく)。
シンプルなセットや衣装はすっかり能舞台だ。「人間のわからなさ」「人生の虚しさ」を描き出して、観る者の思考を強く喚起するセリフ劇。幅広く、落ち着いた演劇好きが集まった感じの東京芸術劇場プレイハウス、全体が把握できる2階席最前列で9000円。休憩を挟み3時間半。

装置は高度に抽象的だ。下手手前に向かって傾斜する四角いステージのみで、上手に俳優と尺八の藤原道山が座り、下手に客席。さまざまな文様や、四隅を照らすライティングと、藤原作曲・演奏の効果的な音楽でシーンを作っていくのが面白い。美術は「足跡姫」などの堀尾幸男、照明は中川隆一。

俳優は通常2、30人必要なところを、14人で全員が複数の役を演じる。劇中劇とあいまって、人間存在の2重性、不確かさを印象づける。
俳優陣は達者揃いだ。特に内野聖陽。母の不倫に苦悩し、力尽きる理想家ハムレットと、対照的に劇中では唯一サバイバルする誇り高いノルウェイ王子フォーティンブラスとを演じる。振幅の大きさがさすがだ。48歳だそうだけど、未熟にも、老成しているようにも見えちゃう。
語り部的役回りの親友ホレイショ―、北村有起哉はいつものように色気たっぷり。オーディションで決まったという決闘相手レアティーズの加藤和樹は立ち姿が映え、透明感ある恋人オフィーリアの貫地谷しほりは、運命の伝令オズリックもこなす。
敵役クローディアスと王の亡霊は曲者・國村隼。蜷川版では亡き平幹二朗の水ごりにびっくりしたけど、國村は普通人ゆえの開き直りに説得力がある。ほかに宰相ポローニアスに声のいい壌晴彦、墓掘りに村井國夫、母ガートルードに美しい浅野ゆう子、ハムレットの学友に山口馬木也と今拓哉。

休憩後の2幕冒頭、1幕のラストの動きを巻き戻す、なんて楽しい工夫も。シェイクスピアってつくづく、懐の深い入れ物なんだなあ。

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