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陥没

シアターコクーン・オンレパートリー2017 キューブ20th.2017 陥没  2017年2月

作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチ。2009年「東京月光魔曲」、2010年「黴菌」に続く昭和3部作の最終作ということだけど、従来の妖しさ、毒気はすっかり影をひそめ、ハートウォーミングなほどの人間喜劇だ。五輪の前、歴史上まれな高度成長という時代の明るさ、余計なことを考えずにすんだ日常へのオマージュということか。豪華キャストが皆、非常にはまり役だし、照明などが高水準で、まとまりがある。客層が幅広いコクーン、上手寄り後ろの方で1万円。休憩を挟み3時間半だが、長さは感じない。

昭和38年、東京。瞳(小池栄子)は亡き父が遺したホテルのプレオープンで、前夫・是晴(井上芳雄)と若い結(松岡茉優)の婚約披露パーティーを引き受けるが、浮浪者の一団が部屋に入り込む騒ぎに。ダメ夫・真(生瀬勝久)を含む、じれったい4角関係を軸に、是晴の母(安定感の犬山イヌコ)や弟(瀬戸康史)、結の恩師(色っぽい山西惇)らが出入りし、互いを思う大人の群像劇が、小津安二郎ばりにしみじみさせる。さらに瞳の父(山崎一)の亡霊が是晴との復縁を画策して「魔法」を使うあたりは、「奥さまは魔女」のようで、ベタなほどのファンタジックコメディだ。

俳優陣はそれぞれ持ち味を発揮。背筋の伸びた小池は凛として健気、井上はだらしないけど善人。ピュアな瀬戸が達者で、影がある松岡と好対照を見せる。何やら画策する生瀬は胡散臭く、瀬戸についてきた長髪男や金貸しの山内圭哉はもっと胡散臭い。ホテルスタッフで小池の親友・緒川たまきの軽妙なリズム感が際立ち、瞳の幼馴染の趣里、そのマネージャー・近藤公園も安定。美しいマジシャン高橋惠子が、貫禄で全体を引き締める。神様の声はお馴染み峯村リエと三宅弘城。

ホテルロビーの3階建てワンセットと、背景で揺れる色づいた樹木がお洒落(美術・BOKETA)。照明(関口裕二)も冒頭・回想シーンのモノクロ風や、白塗り亡霊へのスポットが巧く、オープニングクレジットの客席横まで使ったプロジェクションマッピングも美しい(映像・上田大樹)。
テニスとか新幹線といった昭和なキーワード、そして家具調の東芝!製テレビから電器屋が謎のミイラを取り出すエピソードやらが楽しい。それにしてもタイトルの意味は何だったんだろうなあ…

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