落語「黄金の大黒」「小政の生い立ち」「鼻ほしい」「二番煎じ」
よってたかって新春らくご’17 21世紀スペシャル寄席ONEDAY 2017年1月
恒例の落語会の夜の部。どなたも余裕があって、さすが水準が高い。年配客が多いよみうりホール、中央あたりで4100円。中入りを挟み2時間。
少し遅れて、前座(市馬の弟子・柳亭市若「転失気」)途中で滑り込む。本編はまず円楽一門の三遊亭兼好。嫌われてもサムズアップのトランプは凄い、自分だったら無理、といったチャーミングな時事ネタから「黄金の大黒」。長屋の連中が大家に招かれ、店賃の催促かと警戒していると、息子が黄金の大黒を掘りあてた祝いだというので、妙な羽織で慣れない口上を述べる。宴会部分はさらっと進んで、床の間の大黒が弁天を呼びに行く、というオチ。朗らかでテンポが良く、聞いていて心地いい。
続いて、待ってました柳家喬太郎。仕事の移動ではウエストポーチを使う、クラッチバッグを失くしたことがあるので(大金のギャラが入っていた)、東京駅のコンコースで(そういえばいつからコンコースになったのか、通路でいいのに、ロビーでいいのにホワイエだし)、絵に描いたようなチンピラ(巧い!)が荷物を改められていて、自分もポーチを見とがめられた…などと、相変わらず絶妙な、主演映画の告知付きマクラから、「次郎長外伝~小政の生い立ち」。生意気な小僧の政吉が、ニヒルな次郎長とファンキー石松に出会って小遣いをもらい、親の死後に訪ねていく、という正統派・講談ネタだ。人物がくっきりとして、魅力がある。「俺たちは『商売往来』に載ってねぇ稼業だ」「噺家?」とか「石松のつぶってる目が逆」とか、笑いもたっぷり。
中入り後は飄々と春風亭百栄。噺の出だしで「ぞろぞろだな!」などと演目をメモって、裏切られる落語ファンを描き、爆笑をとってから「鼻ほしい」。鼻を失い、変な発音の浪人が、馬子と川柳のやりとりで揉めて…という、なかなかエグイ滑稽噺。
トリは一転、爽やかに柳亭市馬。百栄のマクラを取り入れ、「これで芝浜にはいかないよ」と笑わせてから「二番煎じ」。夜回りに集まった旦那衆が、番小屋で酒と猪鍋を楽しんでいて同心に見つかり、煎じ薬と言い訳すると、同心もぐいぐい呑んで、「ひと回りしてくるから二番を煎じておけ」。寒い冬の夜の風情、火の用心の掛け声が粋な節回しになっちゃうところが、師匠らしくて、客席も手拍子。いつもながら、おおらか。
「成金」を応援するのもいいけど、手練れは安心してひたれるなあ。あとからチラシを読んだら、喬太郎さんは主演映画を舞台化もするらしいし、ますます意欲的です。今日は充実してました~