ロミオとジュリエット
ロミオとジュリエット 2016年12月
没後400年で、気鋭の藤田貴大がシェイクスピア初挑戦。松岡和子翻訳を、上演台本・演出の藤田が大胆に再構築した。たった5日間の少女たちの衝動。完全に藤田ワールドだなあ。意外と男性、年配が目立つ東京芸術劇場プレイハウス、中段やや上手寄りで5500円。休憩無しの2時間弱。
いきなり主人公2人の死のシーンから始まり、毒薬入手、はずみの殺人、燃え上がる恋、運命の出会いへと遡りつつ、エピソードをパッチワークしていく。すべてが否応なくつながっていたという感覚。何故若者は、つたない死へと突き進んでしまったのか?
象徴的なのは「ありとあらゆる壁という壁」という台詞。抑圧のリフレインが胸にささる。実際、舞台上に蝶番でつないだ2枚の壁があって、男優陣が自在に動かして人物同士を隔てたり、場面を作ったりしていく。
そして14世紀イタリアの悲劇にひとり、日本人の女の子ひよ(西原ひよ)が紛れ込む。「かつて死を選んだ友達にまつわる、忘れられない記憶」という、作家が常に描いてきた存在が、戯曲を現代へ引き寄せる。残された者たちが、舞台奥から懸命に2人を呼ぶけれど、ついに呼び戻すことはできない。取り返しのつかない時間。
主要人物を女優が演じ、女子高の文化祭を思わせるのはいつも通り。この藤田ワールドに賛否ありそうなのも、いつも通りかな。初舞台というジュリエット役、豊田エリーの可憐さが際立つ。ロミオの青柳いづみは疾走シーンの焦燥感などで持ち味を発揮。ほかにジュリエットの婚約者パリスにりりしい川崎ゆり子、親友マキューシオに菊池明明、敵役ティボルトに尾野島慎太朗、従者バルサザーに吉田聡子ら。
MUJIっぽさに古典を振りかけた衣装は大森伃佑子、音楽は大人びたジャズ風で、山本達久が舞台上でドラムも演奏、ほかに石橋英子、須藤俊明。
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