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ワルキューレ

ウィーン国立歌劇場2016年日本公演「ワルキューレ」  2016年11月

9回の日本公演で初という、ウィーン歌劇場によるワーグナー「ニーベルングの指輪」第1夜を、スペシャリストのアダム・フィッシャー指揮で。深みのあるオケ、表情豊かな歌唱で、心揺さぶる舞台となった。大入りの東京文化会館、1階下手寄りで6万1000円。休憩2回で約5時間の長丁場も全く辛くない。

「ワルキューレ」は2009年に新国立劇場のキッチュなキース・ウォーナー演出、また2011年にMETライブビューイングで大仕掛けのルパージュ演出を観て以来。情報量の多かった過去2回に比べセットがシンプルな分、高水準揃いの歌の力、壮大な楽曲がダイレクトに響いた。あまりに人間的な、神々の矛盾と苦悩。

なんといっても堂々たるヴォータンのトマス・コニエチュニー(ポーランドのバスバリトン)が、強靭から繊細まで、振り幅大きい表現力を発揮。権力欲も、浮気癖もと欠点だらけの王様だけど、世界を変えるのは自分にはない強い意思と愛であり、それを若い世代に託したいと切望している。特に終盤、逆らった愛娘ブリュンヒルデを許せずに眠らせちゃった後、丁寧に白い布をかけてやるシーンの切なさ。まるで花嫁衣裳のようだ。眼帯はなくメークで表現。
対峙するブリュンヒルデのニーナ・シュテンメ(スウェーデンのソプラノ)も、長丁場をものともせず、ひたむきさを存分に。聡明で、父の真意を理解するからこその反抗なのだ。キラキラ鎧が綺麗。
前半は英雄ジークムントのクリストファー・ヴェントリス(イギリスのテノール)が伸びやかで、妹ジークリンデのベテラン、ペトラ・ラング(ドイツのソプラノ)はちょっと弱いかと思ったけど、しり上がりに。長髪・長身フンディングのアイン・アンガー(エストニアのバス)が低い声を響きわたらせ、孔雀コートのフリッカ、ミヒャエラ・シュースター(ドイツのメゾ)も気高くて、カーテンコールで大きな拍手を浴びていた。

端正な演出は「アリアドネ」と同じスヴェン=エリック・ベヒトルフ。照明を落とし、1幕の装置は中央のトネリコの木とテーブル・椅子、2幕では森に白い石が点在するぐらい。謎の金の頭は人の愚かさを、狼の死骸は野性を表すのか。馬9頭の像を並べた3幕に工夫があって、「ワルキューレの騎行」は高揚感を抑制。戦乙女たちは尚武というより、兵士を邪険にしちゃって、闘いの不毛を思わせる。フィナーレはプロジェクションマッピングで広い舞台全体が激しい炎に包まれました。

ロビーにはボータの追悼パネルや、椿姫などの衣装の展示。財界人らの姿も。

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