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橋の下のアルカディア

中島みゆき夜会Vol19「橋の下のアルカディア」  2016年11月

初中島みゆきは、全46曲で物語を綴る「夜会」シリーズで、2年ぶりの再演版だ。弱い存在が踏みつけられたところから始まる、圧倒的な救済を、「万病に効く」みゆき節で。カタルシスだなあ。セットや動きを作り込んでるけど、台詞はほとんどなく、3人がたて続けに手持ちマイクで歌っていく。不思議な仕立てだけど、芯はあくまでコンサートの印象だ。かなり年齢層が高いTBS赤坂ACTシアター、中央あたりで2万円。休憩を挟み2時間半。

第1幕は、閉鎖が決まってシャッター街となった古い地下道。水晶玉を操る占い師(中島みゆき)とコケティッシュなバーの代理ママ(中村中)、元・模型屋の息子の警備員(石田匠)が、時代に取り残されたなりに楽しく暮らしている。そこに天明期、橋を守るため犠牲となった妻(中島)と、後を追う夫(石田)、置き去りになった猫(中村)という3人の前世が重なる。
そして第2幕は再び現代。放水路に転じた地下道を豪雨が襲う。爆音のような雷。象徴するのは繰り返す天災か、個人を押し流していく社会や時代か。水が押し寄せ、あわやと思われたとき、戦時下に逃亡兵を匿った防空壕の記憶が忽然と立ち上がる…

前半は昭和演歌ドラマ風で、ちょっとまったりしてるけど、後半「二隻の舟」あたりから「呑んだくれのラブレター」「いらない町」とどんどん盛り上がり、「国捨て」「India Goose」は怒涛の展開。中村と石田の、揺れの少ない声が中島節に合って力強い。音楽プロデューサーは瀬尾一三。特に中村は、「恋なんていつでもできる」などダンスも達者にこなし、前世は猫というコケティッシュな設定がよく似合う。
地下道のセットは中央に階段があり、背景に宿命的な橋梁が浮かび上がる。かつて石田の父が、たぶんバーの先代ママに宛てたラブレターを紙飛行機にして飛ばす追憶シーンあたりから、ぐっとスケールが大きくなり、頭にケガをした石田の包帯などで特攻のイメージを表現。ラストは広い舞台を存分に使ってダイナミックだ。美術は「逆鱗」などのベテラン堀尾幸男。
シャンソンみたいに、歌自体に演劇性がある中島ならではのパフォーマンスなのだろう。聴衆は舞台に集中していて意外に大人しく、
カーテンコールでようやくちょこっとMCがありました。

ロビーでパンフレット、ロゴ入りカステラなどを販売。川底をイメージしたというスパークリングワインのカクテルも。

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