はたらくおとこ
阿佐ヶ谷スパイダースpresents「はたらくおとこ」 2016年11月
劇団20周年で、長塚圭史作・演出の代表作を12年ぶりに再演。休憩無しの2時間半、嫌な感じのスプラッタを、曲者揃いの中年俳優陣がハイテンションで押しまくる。東京公演の楽日とあって、立ち見もぎっしりの本多劇場、やや後ろ上手寄りで6800円。
雪がちらつく東北、りんご農園&パッキン工場事務所という、ごたごたしたワンセット(美術は松岡泉)。一本気な経営者・中村まことと、従業員の訳アリ池田成志、ピュアな盟友・中山祐一朗、バイトの妙に可愛い池田鉄洋がいるけど、経営は完全に行き詰っている。そこへ池田の兄(渋い松村武)、妹(可憐な北浦愛)が迷惑な農薬を持ち込んだせいで、地元農家の襲撃に遭い、さらに中山の弟(切ない伊達暁)が軽トラで突っ込んできちゃう。その積み荷がまた大変な代物で… ほかに地元の太っちょ男に富岡晃一郎、得体のしれないトラック運転手に長塚。
巷にあふれる美味しいものを笑うように、何故か懸命にシッぶいリンゴを追い求める男たち。とにかくダメ人間揃いで、事態を打開しようと暴走するものの、ことごとく見当違いだ。笑いとはちゃめちゃな極限状態の果てに、人間のダメさ、哀しさを凝縮したような赤い果実が輝く。グロと悪臭の設定には思わずひいちゃったけど、もたらされる一筋の赦しが、後からじわじわ染みてくる。
北浦以外は初演メンバーが揃ったという、8人の演技バトルが見事だ。狭い空間で鎌を振り回したり、自棄っぱちで聖子ちゃんを合唱したり。いい大人なのになあ。
プログラムはいわば両A面で、後半は劇団20周年の特集で、ゆかりの俳優の対談などを収録。これを読んでから観ると、また感慨があったかな。ロビーには過去作のポスター展も。
« 仮名手本忠臣蔵 第二部 | トップページ | 一中節「松羽衣」「姫が瀧四季の山めぐり」 »
「演劇」カテゴリの記事
- ドードーが落下する(2025.01.18)
- 消失(2025.01.25)
- 2024年喝采尽くし(2025.01.01)
- 天保十二年のシェイクスピア(2024.12.28)
- モンスター(2024.12.28)
コメント