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マリインスキー・オペラ「エフゲニー・オネーギン」

マリインスキー・オペラ「エフゲニー・オネーギン」  2016年10月

秋晴れの上野公園。2012年のコンサート形式から4年ぶりに、マリインスキー歌劇場の来日公演に足を運んだ。指揮はもちろん芸術総監督ワレリー・ゲルギエフで、チャイコフスキーの甘美なメロディーをたっぷりと。東京文化会館大ホール、下手寄り中段のA席で3万6700円。休憩2回を挟み3時間40分。

1879年の初演キャストはモスクワ音楽院の学生だったという逸話もあって、今回の歌手陣はマリインスキー劇場付属アカデミーの若手が中心。安定してたけど、パワー不足、オーラ不足は否めない。もちろんライブビューングで観た2013年のメトオープング、ネトレプコ+クヴィエチェン+ベチャワと比べちゃ酷だけど…

1幕ではタチヤーナ(大人っぽいマリア・バヤンキナ、ソプラノ)の「手紙の場」に超期待していただけに、ちょっと物足りない。「もしもこの世に家庭の幸せを求めるなら」のオネーギン(けっこう渋いアレクセイ・マルコフ、バリトン)と、2幕「我が青春の輝ける日々よ」のレンスキー(小柄なエフゲニー・アフメドフ、テノール)はまあまあ。
3幕「恋とは年齢を問わぬもの」のグレーミン公爵(エドワルド・ツァンガ、バスバリトン)で盛り上がり、タチアーナとオネーギンの2重唱「オネーギン様、私はあの時若かった」では深めの声がシーンとマッチして、大拍手となりました。

アレクセイ・ステパニュクの新演出はとても洒落ていて、1幕は舞台横いっぱいの低い階段に、5000個のリンゴを転がし、田舎風情や人物の若さを表現。セットは天井から吊るしたブランコなど最小限に抑え、背景に映した雲や月、朝焼けが雄大だ。1場ごとに左右と上から閉まる幕で、舞台の一部にズームインするような面白い効果を出す。
3幕ペテルブルグの宮殿舞踏会でのポロネーズは、あえてバレエを封印。高い窓とネバ川河畔のシルエットを背景に、青のグラデーションと金の豪華衣装をまとった貴族たちが、悠然と歩くだけで、現実離れした雰囲気を醸す。大詰め2重唱はあえて幕前で歌い、ラストにぱあっと幕が開いて、広い精神の荒野にオネーギンが1人取り残される。鮮やかでした。

客席には財界人の姿が。熱心なブラボーも。

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