« 秋らくご「子ほめ」「芝居の喧嘩」「笠碁」「普段の袴」「三枚起請」 | トップページ | マリインスキー・オペラ「エフゲニー・オネーギン」 »

歌舞伎「外郎売」「口上」「熊谷陣屋」「藤娘」

芸術祭十月大歌舞伎 夜の部 2016年10月

八代目中村芝翫、その息子たち四代目橋之助、三代目福之助、四代目歌之助のなんと4人同時襲名披露。実直な成駒屋を、皆で盛り上げよう、という雰囲気だ。歌舞伎座中央前のほうのいい席で1万9000円。休憩3回を挟み4時間弱。

幕開けは2009年に亡き団十郎で観た「歌舞伎十八番の内・外郎売」を、大薩摩連中をバックに松緑が演じる。設定はお馴染み、曽我ものの富士の巻狩。紅白の梅に彩られた雄大なセットと、登場人物のド派手なこしらえが問答無用で楽しい。工藤祐経の歌六が中央にドンと構え、大磯の虎の七之助が頼もしく、舞鶴の尾上右近も綺麗だ。ほかに滑稽な珍斎(吉之丞)、化粧坂少将(児太郎)、遊君喜瀬川(丸顔が可愛い梅丸)らがずらり。
花道に現れた外郎売が、問われて松緑と名乗っちゃたり、舞台中央で襲名のお祝いを述べたりと遊び心を披露してから、お楽しみの言い立て、ゆったりした立ち回り、対面。松緑さん、ハスキーで動きがキビキビしていいんだけど、もっとおおらかさが欲しいかな。

休憩後に口上。お約束藤十郎の紹介で、ベテラン勢は玉三郎、吉右衛門。菊五郎が「奥さんに怒られつつ」としっかり笑いをとり、我當さんは喋りは相当苦しいけど、後見を従えちゃんと座ってて偉い。ほかに雀右衛門、菊之助、松緑、歌六、又五郎が、芸から競馬まで先代の恩を語り、梅玉、魁春、東蔵が応援モード全開。七之助が「亡き祖父も父も、教え方は違えど魂で演じろ、という点では同じだった」としみじみさせ、児太郎が「父・福助も懸命にリハビリしている」と語って泣かせた~

食事休憩を挟んで、9月の文楽で通しを観た「一谷嫩軍記」から「熊谷陣屋」。歌舞伎ではこちらも亡き団十郎さんの名演が印象的だったけど、今回は芝翫型だそうで、熊谷の見得の形などがだいぶ違っていて、若々しい。
新・芝翫の熊谷が、まず花道で悲しみを表現。黒ビロードの綿入れに赤地錦の裃、赤っ面に芝翫筋で、力強い。たおやかな菊之助の藤の方に詰め寄られると、飛び上がって平伏しちゃう。「物語」では軍扇を掲げる豪快な平山見得で拍手。吉右衛門のビッグな義経が、歌昇、右近、副之助、歌之助を従えて登場。「首実検」では熊谷が制札をそのまま高く掲げるかたちに。はきはきした歌六の弥陀六が活躍し、大詰め、熊谷は有髪の僧形となって、幕を引かず全員が絵面におさまって世の無常を嘆く。
感慨は団十郎型のほうが強いけど、全体にリアルな印象。橋之助さん、一生懸命でした~ ほかに相模は魁春、家臣の堤軍次が橋之助。

短い休憩を入れて追出しは華麗に、9月夜の部に続いて玉三郎オンステージ。今回は「藤娘」だ。暗転からパッと照明がつくと、舞台いっぱいの松の大木に藤の花が咲き乱れ、中央に藤の枝と黒塗傘をもった娘がひとり。客席から思わずため息がもれる。左右に長唄囃子連中が控え、衣装を替えつつ、クドキ、ほろ酔いの藤音頭、派手めの有馬節と、力は入ってないんだけど、終始つややかでした。

客席には歌舞伎座ゆかりのベンチャー経営者らしき姿も。楽しかったです。

20161010_004

20161010_018

« 秋らくご「子ほめ」「芝居の喧嘩」「笠碁」「普段の袴」「三枚起請」 | トップページ | マリインスキー・オペラ「エフゲニー・オネーギン」 »

歌舞伎」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 歌舞伎「外郎売」「口上」「熊谷陣屋」「藤娘」:

« 秋らくご「子ほめ」「芝居の喧嘩」「笠碁」「普段の袴」「三枚起請」 | トップページ | マリインスキー・オペラ「エフゲニー・オネーギン」 »