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大歌舞伎「碁盤忠信」「太刀盗人」「一條大蔵譚」

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部 2016年9月

初代吉右衛門を顕彰する秀山祭10周年。襲名50年の当代が、「一條大蔵譚」で気迫の舞台だ。次世代では娘婿・菊之助の芝居らしさが際立つ。両花道が期待感を盛り上げる、歌舞伎座中央前の方のいい席で1万8000円。休憩2回で4時間半。

幕開けは「碁盤忠信」。1911年(明治44年)に7世幸四郎の襲名興行で初演された作を、染五郎が2011年(平成23年)に復活したそうだ。千本桜でお馴染み忠信を素材に、歌舞伎のけれんをぎっしり詰め込んでいて若々しい。
第一場鳥辺野の場は登場人物がずらり並んで、義経拝領の宝剣をめぐり、古風なだんまり。そしてお勘(いわくありげな菊之助)、忠信(染五郎)が両花道を使って華やかな引っ込み。
第二場堀川御所の場は、義経が去った後の屋敷が舞台。上手の御簾があがると大薩摩、下手に常磐津で贅沢です。まず酒を売りに来たお勘が、鮮やかに言い立て。続いて身を隠していた忠信が舅の入道(歌六がひょうきん)相手に、風雅に吉野山の様子を踊る。入道が忠信を討とうとすると、小車の霊(児太郎)がすっぽんから現れて救い、忠信は豪快に碁盤を振り回して見得を切る。お馴染み番場の忠太(亀蔵)のワルぶりが安定。
第三場堀川御所奥庭の場では、お約束のゆったりした立ち回り。布を広げて碁石にみせるなど、大らかです。ラストは横川覚範(松緑)と対峙して幕となりました。

休憩を挟んで「太刀盗人」。狂言「太刀奪(たちうばい)」を素材に、1917年(大正6年)に初演した舞踊劇だ。手堅いけど、ちょっと地味だったかな。舞台後方に長唄囃子連中が並び、松羽目らしい片砂切(かたしゃぎり)で幕開け。田舎者の万兵衛(錦之助)が持つ太刀を、すっぱ(スリ)の九郎兵衛(又五郎)が狙う。目代(代官)の左衛門(長身の彌十郎が堂々)の問いに、九郎兵衛が万兵衛を真似て答えるさまが滑稽。ラストは九郎兵衛が逃げ出し、「追廻し」となりました。

いよいよ休憩後に、楽しみにしていた「一條大蔵譚(ものがたり)」。享保年間の時代物「鬼一法眼三略巻(きいちほうげん さんりゃくのまき)」の四段目で、吉右衛門の演技力を堪能する。謀略渦巻く平家全盛の時代。権力転覆を胸に秘め、自身はかりそめの服従を貫く大蔵。公家の気品を漂わせつつ、実はいつも奥歯を噛みしめている。実にニヒルな造形だなあ。
序幕檜垣茶屋の場は明るい御所の門前。舞台いっぱいの腰元らを引き連れ、能狂言見物に明け暮れる大蔵卿(吉右衛門)が、門を飛び出すシーンから見事な阿呆ぶりで衝撃的。白塗りで目がすっかり細くなっちゃってるし、狂言師志願のお京(たおやかに梅枝)の踊りに見とれて、床几から転げ落ちるし。しかしお京を見守る夫・鬼次郎(碁盤忠信から一転、きりっとした菊之助)に気づいて、花道でちらりと警戒感を現す。
続く大詰大蔵館奥殿の場では、まず12単で楊弓に興じる常盤御前(魁春)を、源氏再興を狙う鬼次郎・お京が責める。常盤は義朝死後、子を守るため清盛に身を任せた、今も楊弓の振りで清盛を調伏(呪い)していると明かし、ともに嘆く。
それを盗み聞いて清盛に注進しようとする家老を、一転、毅然とした大蔵卿が討ち、公家なまりで源氏に寄せる思いを吐露。びっくりですね~ 源氏決起のタイミングを進言する歌と、源氏の重宝・友切丸を鬼次郎に託す。扇を広げた決まりが鮮やかだけど、それよりも阿呆に戻って、家老の首をもてあそぶラストがなんとも不気味。凄みがありました~

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