« 大歌舞伎「碁盤忠信」「太刀盗人」「一條大蔵譚」 | トップページ | ディスグレイスト »

大歌舞伎「吉野川」「らくだ」「元禄花見踊」

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部  2016年9月

飛び石連休の後半で、歌舞伎座の夜の部へ。吉右衛門、玉三郎のダブル人間国宝を楽しむ。昼の部に続き、大人っぽいお客さんが多い中央、前のほうで1万8000円。休憩2回で約4時間。

まず眼目の「妹背山婦女庭訓 吉野川」。近松半二作時代物の三段目だ。4月に大阪で文楽の通しを観るなど、予習は十分。そもそも国崩しの権力者・入鹿に見張られているシーン、と知って観ると、緊迫感が高まる。
若い2人はロミオとジュリエット的な暴走ではなく、また誰かの犠牲になるのでもなく、自ら信じる大義と恋に殉じる。その静かな決意が、親2人を時の権力との対決へ導く、深い宿命の物語なんですねえ。終始、非常にゆったりしたテンポだけど飽きさせません。

満開の桜に滝車、左右に竹本の床という、スケールの大きいしつらえは、ほぼ文楽と同じ。下手・妹山、金の屛風に雛人形の太宰屋敷は、つかの間のチャリだ。雛鳥(りりしい菊之助)の恋を応援しようと、腰元・桔梗(時蔵の長男・梅枝がたおやか)、小菊(次男・萬太郎)が川に恋文を流す。一方の上手・背山、一段高い銀屛風の大判事の館では、久我之助(染五郎)が経文を読みつつ、父の真意に思いを巡らす。柏の葉を流し返すけど、つれない感じなのは後段への伏線か。
そして両花道を、二本差しが似合う気丈な太宰の後室定高(玉三郎)と、かなり高齢のつくりで、とぼとぼ歩く大判事清澄(吉右衛門)が戻ってきて、客席=川を挟んで言葉をかわす。朗々として、さすがの存在感。入鹿に服従を迫られた苦悩と、真意を隠す感じがくっきり。特に定高の覚悟のほどが際立つ。
その後は怒涛の展開で、久我之助が帝への忠義から切腹。雛鳥も思いを貫くため、進んで死を受け入れちゃう。親同士があまりの衝撃に、パントマイムで状況を伝えあうシーンの切迫感から、びっくりの「雛流し」へ。首になっての嫁入りという凄惨なシーンなのに、琴を加え、哀切にしちゃう技が歌舞伎らしい。大判事が2人を讃える名セリフ「閻魔の庁を名乗って通れ」は、絞り出すようで、剛直かつ悲痛。今回初めて、初代直系の型だそうです。
有名な演目だけど役者が限られ、上演機会が少ないのも、ちょっと納得の舞台でした~

後半はがらり雰囲気が軽くなって、30分の休憩後に「眠駱駝物語 らくだ」。岡鬼太郎作で、1928年(昭和3年)に初演。鶴瓶さんで聴いた関西弁の落語が、登場人物全員のダメ人間ぶりで強烈だったので、歌舞伎版はさらっとした印象だ。
第一場駱駝住居の場は、もう弔いのしつらえがしてあり、長屋のおばさんが念仏を唱えている。半次の松緑は若々しい遊び人ぶりがお似合い。悲劇の若武者から冴えない紙屑買久六に180度転換した染五郎は、健闘だけど、笑いのセンスは今ひとつかな。
セットが回って、第二場家主佐兵衛内の場では佐兵衛(歌六)、女房おいく(人間国宝・東蔵)が安定の小ずるさぶり。駱駝の馬吉(亀寿)がかんかんのうを踊る。第三場元の駱駝内の場で、久六が酔っ払う。ラストは半次の妹おやすが駆け込んできて、母親の死を告げる。たれ目の米吉(歌六の長男)が相変わらず可愛いけど、オチはあまりすっきりしなかった。

25分の休憩の後は1878年(明治11年)初演の短い舞踊「元禄花見踊」で、玉三郎オンステージだ。なにしろしょっぱなから暗い舞台の中央、はらはら舞う桜の花びらの下、スポットライトを浴びてせり上がっちゃう。お見事。
ぱっと明るくなると後方に「二上り」の長唄囃子連中が並び、元禄風こしらえの男女が華やかに。元禄の男は亀三郎・亀寿兄弟が折り目正しく、歌昇が色っぽい。ほかにころっとした萬太郎、長身の隼人(錦之助の長男)ら。元禄の女は梅枝、種之助(歌昇の弟)、米吉、児太郎(福助の長男)、芝のぶら。
玉三郎が引き抜きの後、ラストに迫力ある黒地の着物に着替えて、格好良く打ち出しとなりました。

ロビーでは桐竹勘十郎さん、春風亭一之輔さんに遭遇! 

20160922_002 20160922_001

« 大歌舞伎「碁盤忠信」「太刀盗人」「一條大蔵譚」 | トップページ | ディスグレイスト »

歌舞伎」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 大歌舞伎「吉野川」「らくだ」「元禄花見踊」:

« 大歌舞伎「碁盤忠信」「太刀盗人」「一條大蔵譚」 | トップページ | ディスグレイスト »