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ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景

ワークショップ公演「ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景」  2016年8月

夏の終わりに、藤田貴大作・演出の世界にひたる。劇団員は参加せず、いつにも増してシンプルな構成で、独特の喪失感をしみじみと。彩の国さいたま芸術劇場で、初めて大稽古場というところに足を踏み入れた。自由席で1500円、休憩無しの1時間半。

戯曲は藤田が23才だった2008年の初演。2005年に100人を超える犠牲者を出したJR福知山線脱線事故がモチーフで、マームとジプシーの初期の代表作だそうだ。俳優25人が、唐突な断絶を迎える直前の、平凡なあの朝を演じる。
ちょっと心がすれ違った若い夫婦、たこ焼きパーティーを計画しているアラサー女性たち、ポジション争いに悩むバスケ部員、祖母と2人暮らしの訳アリ少女、いじめにあっている少年…。それは生き残った者が繰り返し噛みしめる、記憶の中の風景のようで、辛い。
終盤、登場人物が追憶の少女時代で見せる、長い長い縄跳びシーンが、いかにも藤田らしくて秀逸。説明的なセリフではなく、ましてやショッキングな映像でもなく、生身のリアルな息苦しさでもって、ただ座っているだけの観客をも息苦しくさせていく。突然の悲劇が、いかに理不尽だったか。そして日々は続いていくけれど、決して忘れられない想いがあるということ。

四角く暗い空間の3方に、数段の客席を置き、セットは俳優が動かすベンチくらい。独特のリフレイン、歌うようなセリフ回しやリズミカルな歩き、インディゴと生成のシンプルな衣装などはいつも通りの印象だ。
しかしオーディションで373人から選んだという俳優陣には、70代もいて、劇団公演とはだいぶ味わいが違う。歩くシーンでは若い俳優が肩に手を添えるし、お年寄り自身、腕を三角巾で吊ったり車いすを使ったりして、体の衰え、不自由さというものを表現に転換していた。

30代になったというこの作家が、さらにどう展開していくのか、楽しみです。

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