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歌舞伎「荒川の佐吉」「鎌髭」「景清」

七月大歌舞伎  2016年7月

海老蔵、猿之助の市川対決にひかれて、夜の部へ。テレビ時代劇のような新歌舞伎と、思い切り荒唐無稽な歌舞伎18番復活ものという変化に富んだプログラムで、見ごたえがある。個人客が多い歌舞伎座の前のほう中央で、1万8000円。休憩2回を挟み4時間半。

まず真山青果作、昭和7年初演の「江戸絵両国八景 荒川の佐吉」。猿之助が三下から成り上がるタイトロールを熱演する。不憫な幼子を思う人情、義理を通す男っぽさを古風に。仁左衛門が何度か演じている役なんですねえ。色悪・海老蔵の得体のしれなさが、ギリギリの線なんだけど格好いい。また善人・巳之助が切なく存在感を発揮する。
序幕の舞台は両国。威勢のいいヤクザ者・佐吉(猿之助)の「強い者が勝つのではない、勝つ者が強いんだ」という独特の哲学に触発され、謎の浪人・成川郷右衛門(海老蔵)が佐吉の親分・仁兵衛(猿弥)を斬り、縄張りを奪う。唐突さがクールだ。そして仁兵衛の次女・お八重の米吉(歌六の長男)が可愛い!
第二幕は本所と法恩寺橋のたもとへ。落ちぶれた仁兵衛が情けない最期をとげ、勝気なお八重は姉が産んだ赤ん坊・卯之助を置き去りにして出奔してしまう。

第三幕はそれから7年後。佐吉は両国で、親友の大工・辰五郎(巳之助)と、目が不自由な卯之助(猿之助一門の市川猿が達者に)を慈しんで育てていたが、卯之助を取り戻しにきた大店の遣いを誤って手にかける。そこから「捨て身になれば怖いものはない」と豹変。向島請地秋葉権現で、仇・成川を打ち取る。
第四幕も両国。縄張りを取り戻して、いっぱしの親分となった佐吉が、卯之助を返せという恩人・政五郎(中車)と生みの母・お新(笑也)に対し、切々と育ての親の情を訴える。しかし結局、卯之助の幸せを願い、自分は一生の旅人で終わろうと達観。桜舞い散る向島長命寺前の堤を、すっかり大人びたお八重らに見送られて江戸を発つ。流転のドラマ。なかなか複雑な造形だなあ。

休憩後はうってかわって、理屈無用の荒事だ。古典を再構成、藤間勘十郎演出・振付による「寿(ことほいで)三升景清」(2014年初演)から、まず「鎌髭」。上手にはもちろん大薩摩!
三保谷四郎(左團次)、梶原源太(声が素晴らしい亀三郎)ら源氏がたの面々が、鍛冶屋を装ってずらり待ち構えるところへ、平家再興を企む不死身の悪兵衛景清(海老蔵)が悠々と登場。「暫」パターンですね。海老蔵はなんだかお父さんに似てきたセリフ回しと、横溢する市川宗家のプライドがいい。
隈取の青が、敗者の心の闇を表すという景清は、源氏がたを散々におちょくったり、ぐびぐび酒を呑んだり、やりたい放題。対するかわうそお蓮(余裕の萬次郎)、猪熊入道(市川右近、来年の右団次襲名にも言及)がコミカルでいい味だ。「あーりゃ、こーりゃ」の化粧声にのせた鷹揚な力比べの後、景清は自ら縄にかかって花道を引き揚げる。

短い休憩を挟んで「景清」。あこぎな詮議役の岩永左衛門(猿弥)が景清の妻子、傾城阿古屋(笑三郎)と人丸(海老蔵の部屋子・福之助)を召し出して、廓の真似ごとの末、口説こうとするが、阿古屋はきっぱり拒絶。きんきら衣装といい、気風の良さといい、すっかり揚巻だ。逆上した岩永が刀を抜くところを、理性的な秩父庄司重忠(猿之助)が登場して諌める。
後半は牢の格子を挟んで、景清と重忠の問答。ここまでは意外に大人しいんだけど、ラストは津軽三味線が登場して、強引かつ怒涛の展開だ。景清は重忠に諭されて妄執から解脱。牢破りから、まさかの巨大な海老を背負い、牡丹の台座に登って、王道・荒事の見得を切りまくる。意味不明な弾けっぷりに、可笑しくて大拍手するうち、幕となりました。

客席には著名財界人のお姿も。面白かったです!

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