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BENT

PARCO PRODUCE  BENT ベント  2016年7月

米マーティン・シャーマンの1979年初演作を、徐賀世子翻訳、4月の「イニシュマン島のビリー」がよかった森新太郎の洗練された演出で。掛け値なしの極限状況で、ゲイの男性が抱く純愛、そして人間の尊厳というものを、佐々木蔵之介が熱演する。若い女性が目立つ世田谷パブリックシアターの見やすい後ろの方、上手寄りで8800円。休憩を挟み2時間45分。

1934年、ベルリン。心に傷を秘め、自暴自棄、享楽三昧に暮らしていたマックス(いかにももてそうな佐々木)と恋人ルディ(細身の中島歩)の運命が、ナチによる突撃隊幹部の粛清「長いナイフの夜」を境に暗転する。突撃隊関係者とみなされ、ゲイ迫害もあって辛い逃亡生活を送った挙句、護送列車でルディは落命。マックスは送り込まれたダッハウ強制収容所で、ユダヤ人と偽り、ぎりぎりのところで生き延びようとする。やがて自我を貫くホルスト(北村有起哉が不器用そうで、抜群の存在感)と、不毛で過酷な石運びの作業をこなすうち、心を通わせ始める…
人間が人間に示す、歯止めのきかない残酷さ、それに直面してなお、正気を保つということ。マイノリティの葛藤、そして自我を受け入れる選択ということ。思わず目を背けてしまうような過酷な物語なんだけど、世界に他者を排除する感情が高まっているように思える今だから、ずっしりと胸にこたえる。

すべてを語るのは、まさに俳優の身体だ。ほとんど全編出ずっぱりの佐々木、そして後半はほぼ2人芝居となる北村が、丸刈り、むき出しの痩せかたで演技して、非常に雄弁。ヘビーな内容ながら、陰惨なだけでなく、ちゃんとユーモアやリズム感も伝えていて、素晴らしい。これぞ演劇。
「真田丸」の悲劇の甥っ子・秀次でお馴染み、新納(にいろ)慎也はゲイクラブのオーナー・グレタ役。ラメのドレスでブランコに乗り、歌を披露する。映画版ではミック・ジャガーが演じたとか。陰のある感じがぴったりだなあ。そして金髪ウルフなどの小柳友も色っぽい。マックスの叔父に藤木孝。

BGMは最小限、セットも人力で回す階段上のセットと照明ぐらいで、シンプルかつ印象的(美術は「コペンハーゲン」が素晴らしかった伊藤雅子)。特に、不吉な赤いライトに浮かび上がる、収容所の鉄条網が怖過ぎる。

話題の舞台とあって、客席には女優さんも来ていたようですね。

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新納(にいろ)です。

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