« 新皿屋敷月雨暈 魚屋宗五郎 | トップページ | 四谷怪談 »

あわれ彼女は娼婦

2015/2016シーズン演劇 あわれ彼女は娼婦  2016年6月

ジョン・フォードのエリザベス朝演劇末期にあたる1632年初演作を、小田島雄志が翻訳、栗山民也が演出。禁断の愛がテーマの大仰な悲劇だけど、象徴的な美術によって社会の矛盾が際立つ。ミュージカルファンらしき女性が目立つ新国立劇場中劇場、中央前のほうのいい席で8640円。休憩を挟んで3時間。

舞台は中世のパルマ。将来ある市民ジョバンニ(浦井健治)は、あろうことか美貌の妹アナベラ(動きが美しい蒼井優)と恋に落ちる。一線を超えて精神的に追い詰められ、ハチャメチャなスプラッタに至る。
若い2人はキワモノだけど、むしろピュア。周囲の大人たちのほうがドロドロです。アナベラと結婚する貴族ソランゾ(イケメン伊礼彼方)を、捨てられた不倫相手のヒポリタ(なかなか色っぽい宮菜穂子)と、失踪していたヒポリタの夫リチャーデット(文学座の浅野雅博)がつけ狙う。ローマから枢機卿に従ってきたグリマルディ(前田一世)は、恋敵ソランゾと間違って気の毒なバーゲット(野坂弘)を殺害。叔父のドナード(春海四方)が告発するが、枢機卿(いつもの重厚な中嶋しゅう)はお気に入りの罪を隠蔽しちゃう。そして何にも気づかない父フローリオ(文学座の石田圭祐)も、すべてを知っていた修道士ボナヴェンチュラ(大鷹明良)も、兄妹を破滅から救えない。
つくづく身勝手で業が深い人たち。シェイクスピア「尺には尺を」と続けて観て、タッチはもちろん違うけれど、圧倒的なセリフ量は共通。そしてこの時代に、あらゆる人間の愚行が出揃っている感じに圧倒される。

登場人物すべての罪深さを、床の巨大な赤い斜め十字と、散りばめられた花びらが表す。ほかに装置はほとんど無し。俳優は舞台袖や手前の階段、後方から出入りし、全体に暗い空間を、後ろで上下する暗幕が鮮やかに切り取る。美術は「マーキュリー・ファー」「RED」などでお馴染み、松井るみ。上手に控える中村友子のマリンバ演奏も効果的だ。

古風な衣装が似合う、姿のいい若手たちの間で、アナベラの乳母・西尾まりと、ソランゾの召使でスペイン人の横田栄司が、達者に存在感を示していいアクセントだ。どちらも貴族に振り回されつつ、したたかさも見せる面白い役回り。ほかに新国立劇場演劇研修所出身の野坂が、コミカルでリズム感があってよかった。要注目。
過去には、文学座で小林勝也・太地喜和子が熱演したり、蜷川さんが三上博史・深津絵里で手掛けたりした戯曲だそうです。なんとなくイメージが沸く。
チケットサイトの貸切日で、カーテンコールに追加して主演2人が挨拶してくれた。

今シーズンは結局、新国立の演劇はこれ1本だった。2018/2019シーズンからは若手の小川絵梨子が芸術監督と発表された。「RED」「トップドッグ/アンダードッグ」が良かった小川さん(偶然にも2人芝居の翻訳もの!)、さて、どんなラインナップになるのかな。

20160619_003

« 新皿屋敷月雨暈 魚屋宗五郎 | トップページ | 四谷怪談 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: あわれ彼女は娼婦:

« 新皿屋敷月雨暈 魚屋宗五郎 | トップページ | 四谷怪談 »