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METライブビューイング「ロベルト・デヴェリュー」

METライブビューイング2015-16第9作「ロベルト・デヴェリュー」  2016年5月

ドニゼッティのチューダー朝女王3部作のラストを、METが初演。女王エリザベッタ(エリザベス1世)役は、意外に初めて聴くソンドラ・ラドヴァノフスキー(イリノイ出身の芸域の広いソプラノ)だ。METライブビューイングでは2011年に「アンナ・ボレーナ」をネトレプコで、13年に「マリア・ストゥアルダ」をディドナートで観ており、前2作ほどの華は感じなかったものの、ラドヴァノフスキーは技術も演技も迫力満点。名演「真珠採り」コンビを含む、豪華キャストの激突も聴きごたえがある。「マリア・ストゥアルダ」に続いてマウリツィオ・ベニーニ指揮、デイヴィット・マクヴィカー演出で、上演日は4月16日。東劇、休憩1回で3時間。

お話は身も蓋もない、嫉妬の末の破滅談。息苦しい絶対王政の時代を背景に、1幕で老女王エリザベッタの寵臣ロベルト・デヴェリュー(甘く哀愁あるマシュー・ポレンザーニ)は、勝手にアイルランドと和睦したかどで、議会から反逆罪に問われている。ロベルトは政略結婚してしまった恋人サラ(美しいラトビアのメゾ、エリーナ・ガランチャ)とまだ想い合っているものの、なんとか諦めて、秘めた愛の証に指輪と、サラが刺繍した青いスカーフを交換する。
続く2幕で、このスカーフが発端となり、友人ロベルトを弁護しようと奮闘していたサラの夫・ノッティンガム公爵(お馴染み苦悩するポーランドのバリトン、マリウシュ・クヴィエチェン)が、妻の裏切りに気づいて激怒。また、したたかな君主のはずのエリザベットも嫉妬にかられて、ロベルトの死刑判決に署名しちゃう。
休憩後の3幕はそれぞれが対決した後、ようやくサラが指輪をもって駆けつけるが、時すでに遅くロベルトは処刑。エリザベットは絶望と孤独に満ちた長いソロの後、投げ出すようにスコットランド王への王位継承を宣言する。

処刑台の露となったアンナ・ボレーナの宿命の娘であり、従妹マリアを死に追いやった冷徹な為政者エリザベッタが、幕切れでは人間臭さをみせ、カツラを脱いで老いをさらす。しかもロベルトはかつての恋人の義理の息子であり、王位を譲ったスコットランド王はマリアの息子というから、つくづく皮肉な運命だ。

幕間のインタビューで「ベルカントは退屈でしょ」といったコメントも飛び出してたけど、どうして十分にドラマティック。襞襟の衣装、パールや宝石など、あくまで古風で豪華な歴史劇だが、大人数の軍勢が出てくるわけではなく、4人の醜いエゴの衝突にフォーカス。ぐいぐい押しまくる音楽のうねりによって、生身の人間の愚かさ、哀しさが聴く者に迫ってくる。特にラドヴァノフスキーは「9割は怒っている役」と笑いながら、大変なエネルギーを発揮。声の重さと技巧を見事に両立させてました。

演出は暗く、重厚。劇中劇のスタイルで、周囲で合唱が観客の貴族たちを演じ、ずっと悲劇を見守っているほか、冒頭でエリザベッタの葬儀を示す。カーテンコールでは合唱にも挨拶する周到ぶりだ。解説はヴォイトで、いつもの余裕たっぷりの主要キャストらへのインタビューが楽しい。

10周年だった今シーズンのライブビューイングを振り返ると、10作中4作を鑑賞。昨年末にNYで、ついにリアル鑑賞も実現し、ぐっと臨場感が増しました!
来シーズンのラインナップを見ると、どうやら次世代のスターに焦点が移る感じ。リンカーンセンター50周年という節目の年にあたり、しかもMETの象徴・レヴァイン音楽監督引退というニュースも飛び込んで、またまた話題が多そうです~

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