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8月の家族たち

シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ2016 8月の家族たち August:Osage County  2016年5月

トレイシー・レッツの2008年ピリッツァー賞・トニー賞ダブル受賞作で、2013年に映画化された戯曲を、目黒条が翻訳。ビターな家族劇だけど、演出のケラリーノ・サンドロヴィッチが上演台本を手掛けており、乾いた笑いが散りばめられた、普遍的秀作となった。
なんといっても麻実れい、秋山菜津子が圧巻の演技! 映画版ではメリル・ストリープとジュリア・ロバーツなんですねえ。やや年齢層高めのシアターコクーン、1階中ほどの上手寄りで1万円。2回の休憩を挟み3時間強。

オクラホマ州オーセージ郡の片田舎にある、立派な2階建てウェストン家のワンセット。8月の暑さが、窒息しそうな人間関係を象徴する。父ベバリー(村井國夫)が失踪し、闘病中でヤク中で毒舌の母バイオレット(麻実)と家政婦ジョナ(羽鳥名美子)が残された家に、離れていた家族が集まってきて、ドラマが動き出す。
登場するのはウェストン家の三姉妹、まず気の強い長女バーバラ(秋山)と離婚直後の夫ビル(生瀬勝久)、ちょっと不良の娘ジーン(可憐な小野花梨)。生真面目な次女アイビー(常盤貴子)、対照的に奔放な三女カレン(スタイル抜群の音月桂)と怪しい婚約者スティーブ(橋本さとし)。さらにバイオレットの気のいい妹マティ(犬山イヌコがはまり役)と夫チャーリー(木場勝己)、その不器用な息子リトル・チャールズ(中村靖日)。そして保安官ディオン(藤田秀世)が、ベバリーの訃報をもたらす。

バイオレットとバーバラを軸に、母娘や夫婦の確執と哀しさを見せていく。最も近いはずなのに、なぜ心が隔たってしまうのだろう。世代や価値観の超え難い壁もあるけれど、結局、互いに不器用なだけかもしれない。厳しい境遇を助け合って生き延びた姉妹が、実は長年胸に抱えてきた秘密の、なんと重いことか。
やりきれない話なんだけど、変化があって全く飽きさせない。中盤でリトル・チャールズが披露する歌の涙が出るような美しさ、大詰めのバンバン皿を割るシーンのカタルシス。葬儀後に一家が食事する重要なシーンでは、食卓が下手から舞台中央に横移動して、小さい回り舞台で回転。そのスピードの変化も場の空気を表して面白かった。ケラさんの翻訳劇は昨年の「三人姉妹」以来。今回は特に巧いなあ。

劇場外には5月12日に亡くなった芸術監督、蜷川幸雄さんの記帳台がありました。喪失感が大きいです…

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