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イニシュマン島のビリー

イニシュマン島のビリー   2016年4月

2014年「ロンサム・ウエスト」が見ごたえあったイギリス育ちのアイルランド人、マーティン・マクドナーの1996年初演作。目黒条の翻訳、やはり14年に観た「ビッグ・フェラー」が重厚だった森新太郎の洒落た演出で。荒涼たる離島に生きる閉塞と、それでも精一杯希望を掴もうとする若者の思いを、笑いに包んだ佳作だ。世田谷パブリックシアター、前の方で8500円。休憩を挟み約3時間。

1934年、アイルランド西方に位置するアラン諸島。生まれつき体が不自由な孤児ビリー(古川雄輝)は、小さい食料品店を営む老姉妹(平田敦子、峯村リエ)と静かに暮らす。しかしゴシップを喋り倒して歩くジョニーパティーンマイク(山西惇)から、近くの島にハリウッドのロケ隊が滞在すると聞き、素行の悪いヘレン(鈴木杏)、ちょっと足りないバートリー(柄本時生)の幼なじみ姉弟と、純朴なバビーボビー(小林正寛)のボートで島を抜け出し、ロケに加わろうと企む。

貧しく愚かで、イギリスによる抑圧とか辛いことがいっぱいある暮らしだけど、決して陰鬱ではなく、笑えるシーンも多い。まるで「じゃりん子チエ」。立場は明らかに弱者なのに、タフで、個性的な近隣の人々が、どこか懐かしく魅力的だ。自虐的な「アイルランドも悪くない」などなど、セリフに繰り返しが多く、しかもたっぷり間をとって語るので、お伽噺を朗読するようにリズミカルだ。

俳優陣も粒ぞろい。古川がなかなか達者に、主人公の繊細さを表現し、対する鈴木が、卵の演技などいつも以上に振り切れていて、生き生きとチャーミングだ。巧いなあ。もちろん柄本、山西ははまり役。そして何といっても、平田と峯村! 並んでカウンターに立つだけで、外国アニメのようなキャラが存在感抜群だ。医師マクシャーリーの藤木孝、90歳なのにアル中のジョニーの母、江波杏子が抑え気味に見えちゃうほど。

食料品店、海岸、ジョニーの家などシンプルなセットを、回り舞台で切り替えていく。それぞれのセットに、登場人物が無言でたたずんでいる映画のようなシーンや、皆が横一列でドキュメンタリー「アラン諸島の人間」を観るシーンに哀愁があって印象的だ。美術は堀尾幸男。

事前に知らなかったんだけど、終演後に山西さん、時生さんのトークショーがあり、ハプニングの暴露談などたっぷり聞けてお得でした。客席になんと柄本明夫妻の姿があり、微笑ましかった~

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