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家庭内失踪

M&0 plays プロデュース「家庭内失踪」  2016年3月

コートがいらない気候になった週末、大好きな岩松了さん作・演出に足を運ぶ。エロくてコミカルな夫婦ものを、お洒落にみせるセンスがさすが。最も近くて、決して分かり合えない夫婦という関係の、だからこそ面白いトホホ感。
テーマが重かった昨年「青い瞳」から一転、2011年「アイドル、かくの如し」を思わせる軽妙さだ。風間杜夫、小泉今日子コンビも盤石です。椅子が良くなってびっくりの本多劇場、中央あたりで6500円。休憩無しの2時間強。

設定は1989年岸田國士戯曲賞受賞作で、昨年、松井周演出で観た「蒲団と達磨」の後日談だ。家族の日常であり、特に事件は起こらない。野村(風間)は高校教師を定年退職し、再婚同士で、前作では別居を言い出していた若い妻・雪子(小泉)と無事暮らしている。年齢相応の衰えを感じている野村の焦りを軸に、夫・石塚を嫌って里帰りした先妻の娘・かすみ(小野ゆり子、大森南朋の奥さんですね)と、妻の様子を探ろうと石塚が送り込む後輩たち、さらに野村を訪ねてくる近所の男・望月(岩松)が絡む。

本心ではなさそうな会話が続く感じはいつも通りだけど、飄々とした野村が全体を牽引。66歳の風間さん、老いの情けなさが似合うようになったんですねえ。特に63歳・望月とのやり取りは、コントかと思うほど息が合って可笑しい。「言葉と切実は反比例する」とか、セリフが耳に残ります。
対する雪子は普通の主婦なのに、妙に色っぽくて、現実味が薄い。このキョンキョン持前の浮遊感が、夫婦という尽きない謎を象徴する。

面白いのは「観察する」イメージだ。夫から逃げてきたかすみは、わざわざ食卓の横に据えたパソコンで、野村と雪子の日常を書き綴る。望月に至っては、失踪したのに自宅の近所に隠れ住んでおり、変装までして妻を尾けまわしちゃう。オースター原作、白井晃演出で観た「幽霊たち」でも引用された、「ウェイクフィールド」に想を得た設定だとか。なんという屈折。異常だけど陰湿ではなく、乾いた悲哀が全編に漂う。作家の習性と重なるような、そして誰もが多かれ少なかれ覗き見の心理を秘めている、ともいえるような。

石塚の後輩で、かすみの様子を見に通ううち、女たちに翻弄されちゃう多田の落合モトキ、そして石塚の弦楽奏仲間で、「ですねですね」が口癖の青木を演じる坂本慶介と、若手も安定してました。
セットは野村家のリビングダイニングと、寝室でもある和室の2間を、左右に出し入れするだけ(美術は原田愛)で、照明も控えめ。フランス映画を連想させる幕切れがとても洒落ていた。

演劇好きが集まり、補助席も出ていた客席。ともさかりえ、高岡早紀、安田章大らの姿も。

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