« 歌舞伎「ひらかな盛衰記」「籠釣瓶花街酔醒」 | トップページ | 「夜、さよなら」「夜が明けないまま、朝」「Kと真夜中のほとりで」 »

逆鱗

NODA・MAP第20回公演「逆鱗」  2016年2月

野田秀樹作・演出。お洒落なタッチのなかに、タイトル通り、時代状況に対する作家の強い怒りが溢れる。松たか子ら手練れのキャストが確かな説得力だ。立ち見も多い東京芸術劇場プレイハウス、後ろの方だけど見やすい中央あたりで9800円。休憩無しの2時間強。

舞台は海上水族館。足元の海底に棲むという「人魚」(松)を手に入れようと、一途な潜水夫たち(阿部サダヲ、満島真之介)と、巻き込まれる気のいい電報配達人(瑛太)、何か企んでいそうな水族館長(池田成志)と娘(井上真央)、人魚学者(野田秀樹)、さらに一切を見つめている人魚の母(銀粉蝶)が入り乱れ、ドタバタを繰り広げる。やがて明らかになる、意外な人魚の正体。

前段はファンタジータッチで賑やかだ。フワフワ衣装のアンサンブルの美しい動きと印象的な装置で、テンポよくシーンを展開していく。お馴染みコミカルな言葉遊び、アナグラムも、俳優陣が区切って発声してわかりやすい。
届かない電報、魚、アンデルセンや比丘尼等々、おもちゃ箱ひっくり返したように膨大な情報を楽しんでいたら、後段で重い主題をぐいっと突きつけられる。この飛躍、まさに演劇かも。
2013年「MIWA」、2012年「エッグ」と共通する問題意識だけど、メッセージはよりストレートだ。歴史に押しつぶされる者の悲哀、当事者意識が薄いまま、お祭り騒ぎに飲まれていく大衆というものの深い罪。大詰めのリフレインで緊張が途切れちゃうけど、この破綻は長崎出身、還暦を迎えた作家の危機感ゆえか。

美術(堀尾幸男)が幻惑的。広い舞台の後方に坂を設け、不思議な半透明の衝立、丸パネル(新素材だそうです)に映像、照明を駆使。特に幕切れの、照明とシャボン玉で表現する海面の遠さ、何とも言えない息苦しさと命への希求が胸を締め付ける。

ひとり異質な存在の松が、凛とした声とダンスで際立ち、阿部はいつも通り切なさを体現。井上がなかなかの色気を発揮する。いつもほど、野田が突出して見えないのは、俳優陣が高水準だからだろう。

008

« 歌舞伎「ひらかな盛衰記」「籠釣瓶花街酔醒」 | トップページ | 「夜、さよなら」「夜が明けないまま、朝」「Kと真夜中のほとりで」 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 逆鱗:

« 歌舞伎「ひらかな盛衰記」「籠釣瓶花街酔醒」 | トップページ | 「夜、さよなら」「夜が明けないまま、朝」「Kと真夜中のほとりで」 »