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歌舞伎「ひらかな盛衰記」「籠釣瓶花街酔醒」

二月大歌舞伎 夜の部  2016年2月

日程が合わずに諦めていた、2月の歌舞伎座。予習もしたし、どうしても評判の「籠釣瓶」を体験したくて、予定と予定の合間に何とか2演目まで観劇した。「お父さんそっくり」「待ってました」など、いつになく大向こうも多彩で盛り上がる。前の方、中央のいい席で1万8000円。30分の休憩を挟み3時間半。

お目当ての「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」は、確かに彫の深い舞台。享保年間の「吉原百人斬り」事件を元にした、三世河竹新七の作だ。明治21年初演とあって、社会システムにからめとられ、虐げられた者の不条理感が現代的味わい。
なにしろ序幕、吉原中之町見染の場、通称「見染め」から、いったん場内が真っ暗になって、ぱあっと遊郭が立ち現れる鮮やかな演出だ。落語の登場人物のような田舎者・次郎左衛門(極め付け吉右衛門)が心奪われる、夢の世界。さらに花魁道中の艶やかなこと。八ツ橋(少し丸顔の尾上菊之助が美しい)は意表をついて、花道ではなくセット裏から現れる。引っ込みで次郎左衛門に投げかけるたっぷりと思わせぶりの笑みは、確信犯か花魁のサガか。

二幕目立花屋見世先の場、大音寺前浪宅の場で、恋人・栄之丞(崩れた二枚目がぴったりの菊五郎)に猜疑が芽生えて、三幕目兵庫屋二階遣手部屋の場では、すっかり常連になった次郎左衛門が、いい気分で地元の友人を連れてくるのが、その後の暗転を知る観客の目に悲しく映る。
廻し部屋の場で栄之丞が八ツ橋を追い詰め、ついに八ツ橋部屋縁切りの場で名ゼリフの応酬へ。胡弓の哀調をバックにした八ツ橋の、苦しくも毅然とした「間夫でござんす」、そして次郎左衛門の「花魁、そりゃあんまりそでなかろうぜ」の絞り出すような切なさ。気遣う九重は上品な梅枝。
大詰、立花屋二階の場は数カ月恨みを蓄積した次郎左衛門が、妖刀籠釣瓶で八ツ橋を一太刀に切り下げ、下女も犠牲に。刀は床の間に置き、とどめは刺さない様式的なスタイルだが、じっと抜き身に見入る不気味なシーンで幕となる。

吉右衛門は陽気というより気のいい雰囲気で、哀れさが際立つ。その大先輩を向こうに回し、ひどい仕打ちをしちゃう菊之助が、煙管を落とすシーンから幕切れの見事なエビぞりまで、華やか、かつ凛と男前の造形。なかなかの存在感です。もっとも、この屈折したストーリーでは、むしろ愚かな女という考え方もある気はした。

「籠釣瓶」に先立つ演目は「ひらかな盛衰記」から、木曽義仲討伐戦・宇治川の先陣争いを踏まえた「源太勘当」。2009年に文楽で観た時と同じで、どうも地味な印象だなあ。
わがまま次男坊の梶原平次景高(錦之助)は、仮病をつかって出陣をさぼり、兄の恋人で腰元の千鳥(孝太郎)を口説く。憎たらしいけどコミカル。そこへ花を飾った烏帽子姿という伊達男の兄・梶原源太景季(梅玉)が帰館し、母・延寿(重厚に秀太郎)も加わって「先人問答」に。実は恩ある佐々木高綱に先陣の巧名を譲ってしまったという。
切腹を覚悟する源太を、延寿は涙を飲んで「阿呆払い」=勘当にして命を救う。源太は荒縄帯のやつし姿となり、母の餞別の甲冑=千鳥と共に西国へ旅立つ。文楽の首に「源太」があるほどの代表的2枚目だから、落差が生きるわけですね。梅玉・孝太郎コンビは手堅いんだけど、生真面目過ぎるかな~

歌舞伎座は地下にお雛さまが飾られ、すっかり早春の雰囲気でした。

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