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元禄港歌

シアターコクーン・オンレパートリー2016 元禄港歌―千年の恋の森―  2016年1月

2016年の観劇はじめは秋元松代作、蜷川幸雄演出の1980年初演作。大衆演劇の匂いがする、こってりしたストーリーを、芸達者揃いの豪華キャストで存分に泣かせます。特に市川猿之助を相手に一歩も引かない段田安則が見事。シアターコクーン、澤瀉屋ファンが目立つ感じの前の方、やや下手寄りで1万3500円。休憩を挟んで2時間半。

播州の港町に、旅回りの瞽女(ごぜ)一座がやってくる。通路を歩いてくる座元・糸栄(猿之助)と初音(宮沢りえ)のたおやかなこと! やがて廻船問屋筑前屋のやんちゃ次男・万次郎(高橋一生)と一途な瞽女・歌春(鈴木杏)の恋のもつれから、生真面目な長男・信助(段田)に思わぬ悲劇が降りかかり、信助は実母・糸栄、恋人・初音と旅立つ道を選ぶ。

一座がずらり並んで三味線で歌う「葛の葉子別れ」、そして終盤の能「百万」というスタンダードな母ものをバックに、糸栄、筑前屋の女房・お浜(新橋耐子)の母2人の辛さがくっきり。 戯曲、演技があいまって人物それぞれに説得力がある。耐える役どころの猿之助は抑えめだが、大詰めで感情を爆発させ、きっちり涙。中盤までは段田が過剰なまでに古風な演技で場をさらう。宮沢は所作の美に磨きがかかり、ヤリ手の父・平兵衛(市川猿弥)に対する、劣等生・万次郎の屈折も切なく胸に迫る。大好きな高橋一生、やっぱりいいなあ。

幕開けから舞台を囲む真っ赤な椿。花が天井からぽつりぽつりと降り続き、深い情念と、世の非情を思わせる。きらびやかな能舞台と、背景に浮かぶ巨大な夕陽も美しい。さらに虐げられた民が一心に唱える念仏「空也和讃」が、どうしようもない社会の理不尽を立体的に見せつける。大詰めの悲田院法師(青山達三)の台詞がせめてもの救いだ。

ほかにも猪俣公章の音楽、美空ひばりの劇中歌、さらに辻村寿三郎の人形(出遣いは川崎員奥)と、芸能の要素をぎっしり詰め込んである。かつては平幹二朗、太地喜和子、富司純子、藤間紫らが演じた作品だ。いや~、贅沢でした。

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