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青い瞳

シアターコクーン・オンレパートリー2015 青い瞳  2015年11月

岩松了さんの作・演出、2008年「羊と兵隊」で抜群の求心力を発揮した中村獅童が主演と、見逃せない新作だ。時代も場所も設定は不明なんだけど、描かれる戦争の傷跡は、現実世界と見事に呼応する。独特の宙ぶらりんなやり取りが、いつにも増して濃密な空気。意味を考え始めちゃうと、ついていくのがちょっと難かしかったかな。ジャニーズとAKBファンらしき女性が目立つシアターコクーンの、中央いい席で1万円。休憩を挟んで2時間半。

帰還兵ツトム(獅童)は戦友の死など、辛い戦争体験のせいでうまく社会復帰できず、気をもむ母(伊藤蘭)は子供時代の希望を取り戻そうと、かつての絵画教師タカシマ(勝村政信)に引き合わせる。だがその再会は欺瞞だった。
一方、妹ミチル(前田敦子)が付き合っているサム(上田竜也)は、バーにたむろするチンピラの一味。よそ者排除に対する抵抗から、陰惨な暴力が高じていく。せっかく戦争が終わったというのに。

ただ歩いているだけで、「尾けただろう」と責められる。そんな他人が決めてしまう意図と、それに絡めとられていくことのそら恐ろしさ。水たまりで魚を釣る、という価値の混濁や、しつこく部屋に入り込む蟻の不吉さ。なにげない日常シーンの背後に意味が潜んでいて、油断がならない。
獅童が暴力と純粋さとの振幅を繊細に表現して、期待通りだ。伊藤蘭と父親役の岩松さんが、息子の孤独を愛情で受け止めようとするけれど、どんどんちぐはぐになっていく姿を達者に。存在感ではやっぱり勝村が突出しており、半端な怪しさからリズミカルな笑いまで、自由自在で色気もある。若い上田、前田は大健闘だけど、獅童、勝村と対峙するとさすがに引き出し不足か。お約束、歌とダンスのシーン(今回はチキチータ)のあっちゃんが、すらっとしていて綺麗。

比較的シンプルに家具を出し入れして、バーやアトリエ、居間を表現。難解さのせいか、カーテンコールはスタンディング無しで、獅童と上田が指さしあってちょっと盛り上がってました。

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