ラインの黄金
ラインの黄金 2015年10月
新国立劇場2015/2016シーズンの開幕は、飯守泰次郎オペラ芸術監督が指揮するお得意、ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」除夜「ラインの黄金」だ。東フィル。長い物語の発端となる世界秩序の揺らぎを、説得力をもって描く。言わずと知れたワグネリアン集結のオペラパレス、1F中央あたりの席で2万4300円。休憩無しの3時間弱。
歌手が充実。なんといってもステファン・グールド(米国のヘルデンテノール)が、初役で火の神ローゲを、赤いマントとサングラスで威風堂々歌って、コズルい半神のイメージを覆す。グールドはリング4作すべてに出演する予定だそうで、楽しみ~。神々の長ヴォータンは2009年にも観たユッカ・ラジライネン(フィンランドのバスバリトン)が安定。さすがに、ちょっと老けたかな? そして指環を呪うアルベリヒのトーマス・ガゼリ(ドイツのバリトン)が、虐げられる者の哀しさを漂わせて表情豊かだ。3場、4場の3人の掛け合いが素晴らしい。
ほかの主要キャストはドイツ出身で固めていて、鍛冶屋ミーメはアンドレアス・コンラッド(テノール)、妻フリッカはシモーネ・シュレーダー(メゾ)、智の神エルダはクリスタ・マイヤー(メゾ)。
日本人も大活躍だ。特に人質になるフライアの安藤赴美子(ソプラノ)が、声が伸びて美しい。ボクサー姿のドンナーは黒田博(バリトン)、ピエロ風のフローは片寄純也(テノール)、厚底靴の巨人ファーゾルトは妻屋秀和(バス)。ラインの娘たちは増田のり子(ソプラノ)、池田香織(メゾ)、清水華澄(メゾ)。
演出は新制作で、フィンランド国立歌劇場の故ゲッツ・フリードリヒ版。2001~02年の再演で観たキッチュで賑やかな「トーキョーリング」と比べると、地味ながらシンプルで力強い。冒頭のライン河と天上界は、斜面の床とネオン管、色とりどりに輝く照明で象徴的に表現。一方、地底界はエレベーターや「DANGER」のサイン、コミカルなマペットの蛙など具象が多く、変化をつけていた。
4作は3シーズンがかりの上演になるのかな。劇場エントランスの巨大な活け花が、「リング」風で良かったです!
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