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英国ロイヤル・オペラ「ドン・ジョバンニ」

英国ロイヤル・オペラ「ドン・ジョバンニ」  2015年9月

快晴のシルバーウィーク、ロイヤル・オペラ来日のもう1演目は、モーツァルトのこの上なく流麗なメロディーに乗せたドンファン物語。身勝手な色男のコミカルなドタバタが、急転直下で破滅に至るお馴染みのストーリーを、最新鋭のプロジェクションマッピングを駆使して、深く知的に表現。パッパーノの指揮(フォルテピアノも)に加え、豪華キャストの歌手陣がとにかく粒ぞろいで、大人っぽいドラマをおおいに楽しめた。NHKホール2F下手寄りの、これまたいい席で5万5千円。休憩30分を挟んで3時間半強。

タイトロールのイルデブランド・ダルカンジェロ(イタリアのバス・バリトン)が、高揚する「シャンパンの歌」や、ピッチカートも甘いセレナーデ「おいで窓辺に」など、深みのある声と堂々の2枚目ぶりで舞台を牽引。そして楽しみにしていたジョイス・ディドナート(米国のスター・メゾ)! 散々な目にあっても彼を見捨てないドンナ・エルヴィーラ役で、期待通りの華やかさだ。「あの人でなしは私をあざむき」とか、余裕たっぷりな感じが、いいんだよなあ。
さらに色っぽい村娘ツェルリーナのユリア・レージネヴァ(ロシアのソプラノ)が、「ぶってよ、マゼット」「薬屋の歌」などでよく声が通り、小柄なきゃぴきゃぴ感も役にぴったりで、存在感十分。若手技巧派ということで、楽しみな歌手ですね。
ほかに父を殺されちゃうドンナ・アンナは若手アルビナ・シャギムラトヴァ(ウズベキスタンのソプラノ)が実力を発揮し、3枚目の従者レポレロはアレックス・エスポージト(イタリアのバス・バリトン)が軽妙に、したたかに。
騎士長は2演目登場でフル回転のアチェト、ツェルリーナの夫マゼットは大柄なマシュー・ローズ(英国のバス)と、いずれも安定。ドンナ・アンナの婚約者ドン・オッターヴィオのローランド・ヴィラゾン(メキシコのテノール)は、前日のコンサートでは不調で途中降板しちゃったらしいけど、本公演はなんとか乗り切っていた。偉い!

さらにデンマークの大物・カスパー・ホルテンの、2014年初演の演出が非常にお洒落だ。2階建てのセットを回転させ、扉や階段で複雑に人物を動かす。こんがらがった関係が視覚化されると共に、混沌ぶりが欲望の虚しさを表現。歌手もドン・ジョバンニとレポレロの服の交換で帽子が遅れるとか、難しい段取りをこなす。
なんといっても目を奪うのは、全編を彩るプロジェクションマッピング。演出過多という見方もできるけど、文字や色かたちの変化が登場人物の脳内を投影。ハイテクとヴィクトリア朝衣装とのアンバランスも面白い。後半では白装束の幽霊も登場。
映像が凝っている分、合唱はピット内が多く、小道具も控えめ。ラストの6重唱は短縮版を、舞台の左右端に歌手が分かれて歌い、ドン・ジョバンニが中央に取り残される演出。地獄落ちはないけど、孤独という地獄を味わうかたちですね。再演監督は英国の歌手出身、エイミー・レーン、ビデオ・デザインは同じく英国で、ロンドン五輪閉会式やスターバンドのコンサートなどを手掛けたルーク・ホールズ。

ロビーでは大物財界人や女性エコノミストをお見かけしました。いや~、充実してました!

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