文楽「面売り」「鎌倉三代記」「伊勢音頭恋寝刃」
第一九二回文楽公演 第一部 2015年9月
プログラムの大夫の部が、上段に新・人間国宝の嶋大夫と切り場語りの咲大夫が並ぶレイアウトに変わり、世代交代を感じさせる文楽公演。千秋楽に足を運んだ。いつになく掛け声の多い国立劇場小劇場、上手寄り前の方のいい席で6700円。休憩2回で4時間半。
幕開けは明るい舞踊「面売り」。床は寛太郎ちゃんら5挺に、三輪大夫以下4枚の変則で。大道芸人・おしゃべり案山子(玉佳)のリズミカルな講釈にのせ、面売り娘(勘彌)が天狗、おかめなどの面を付け替えながら楽しく踊る。
休憩10分を挟み、大坂夏の陣400年にちなんだ時代物「鎌倉三代記」。思えば2008年に文楽初体験で観た演目だ。もう7年もたつんだなあ。
物語は鎌倉方(=徳川方)で三姫のひとつ時姫と、京方(=豊臣方)の三浦之助の、戦さに翻弄される悲恋。歌舞伎では魁春、梅玉の古風な味わいが良かった覚えがある。
導入は希大夫で短い局使者の段、通称「ほととぎす」。米洗ひの段は呂勢大夫、宗助。酒好きなおらち(達者な紋壽)が、きんきら振袖の時姫(清十郎が淡々と品よく)にコメの磨ぎ方を教えるシーンが滑稽だ。
三浦之助母別れの段は津駒大夫とベテラン寛治。幸助さんの格好いい三浦之助が、母の見舞いに駆けつけるものの、母(勘壽)は会うことを許さない。時姫が切々ととりすがる。
そして高綱物語の段は、英大夫、清介が情感がこもって聴きやすい。時姫がいよいよ愛する夫のため、父・時政を討つことを決意。井戸から登場した佐々木高綱(でっかく玉男)がすべて計略だと語る。事情を知った母の自己犠牲の後、高綱が木に登り、それぞれ戦いに向かう。なんとも非情だなあ。
30分のランチ休憩の後、一転、世話物の「伊勢音頭恋寝刃(こいのねたば)」。こちらは2009年に観たことがある。実際の事件を素材に、歌舞伎を文楽に移した夏狂言だ。
古市油屋の段は公演当初の病気休演から復帰した咲大夫が、燕三との鉄壁コンビでたっぷりと。複雑な人間関係も、巧みにさばく。
舞台は精進落としで賑わう伊勢。わけあって名刀の折紙を探す下級神官の福岡貢(初役の和生)を助けようと、女郎お紺(簑助が抜群にけなげで可愛い)は悪党の岩次(玉志)とかりそめの祝言をあげる。知らずに激怒する貢を、いじわるな仲居・万野(勘十郎がこちらも初役を生き生きと)が、ねちねち追い詰めちゃう。初めはコミカル、そして徐々に緊迫感が高まるあたりが床、人形とも見事だ。
大詰め奥庭十人斬りの段では、咲甫太夫、錦糸が疾走。貢が怒りにまかせて、廓の人々を斬っていく。陰惨にならない演出が人形ならではだ。
変化があって楽しめました!
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