談春「たがや」「小猿七之助」「居残り佐平次」
立川談春三十周年記念落語会「もとのその一」THE FINAL 2015年8月
昨年5月から続く記念ツアーの千秋楽、しかもBunkamuraシアターコクーンで初の落語公演だそうで、気合十分のたっぷり3席を聴く。浴衣姿も目立つ幅広い客層で、珍しくロビーに物販も花もなく、開幕前から集中した雰囲気だ。高座と目が合うような、中ほど上手寄りで5400円。休憩を挟み3時間半強。
演芸場風のセットに前座抜きで談春さんが登場。30年続けても偉くない、でも入門の経緯から記念の落語会をやることにした、師匠は江戸の風と言ってたけど…といったぼやき気味のマクラで、夏らしい風がある「たがや」。鍵屋と玉屋の由来から、お江戸両国橋の川開きの賑わいが目に見えるようだ。談志譲りの、たが屋が負けちゃうシュールなパターンでした。
短く三味線を挟んで2席目。コクーンという場の不思議さ、歌舞伎ゆかりの演目のために勘三郎の墓参りをしたらダメ出しが聞こえた、一方、談志は励ましてくれた、と思い入れを語ってから「小猿七之助」。講談「網打七五郎」をもとに、黙阿弥が歌舞伎「網模様灯籠菊桐(あみもようとうろのきくきり)」に仕立て、さらに落語になった演目で、馴染みがないと思ったら、落語版は談志独占みたいなものだったというから、思い入れが強いのも当然か。
陰惨な設定だけど、談春さんの巧さで聴かせちゃう。ストーリーはたがやから川繋がりで、小猿とあだ名された船頭・七之助と芸者・お滝が、禁じられた2人船で浅草に向かう途中、永代橋あたりで身投げの男を引き上げる。いかさま博打で店の掛け30両をすったとか。小猿は一度は助けるが、いかさまの相手が自分の親と知ると、男を突き落とし、さらにお滝の口も封じかける。ひやあ。ところが、お滝は小猿に思いを打ち明け…。下座たっぷりで、ラストは柝も入って雰囲気は上々。文七元結の裏バージョンのような悪党を、見事な芝居台詞で語って拍手。
15分の中入り後、お待ちかね「居残り佐平次」。2013年に聴いたことがあるが、やっぱり談春にぴったりのネタだと思う。
品川の遊郭で、どんちゃん騒ぎを繰り広げる佐平次の、なにやら粋な造形。鰻まで平らげて、カネはない、と居直る意味不明のアナーキーさ。そして居残ってから、何故か太い客に気に入られちゃうサービス精神と愛嬌。いいなあ。
佐平次の来歴はあまり説明せず、あくまで意味不明のアナーキーさのまま、「あんな奴、裏から帰せ」「裏を返されたら困る」でサゲ。鮮やかです。
いったん幕をあげて、佐平次にはカネへの反発がある、年内はドラマ「赤めだか」を宣伝しないといけない、次は志らくの30周年を祝ってやってくれ、などと話し、三本締めでした。面白かった~
客席には北村有起哉さん、酒井順子さん、千住明さんらしき姿も。人気だなあ。
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