虹とマーブル
M&Oplaysプロデュース 虹とマーブル 2015年8月
倉持裕の作・演出。1962年から80年代に至る、ひとりの成り上がりの半生を通じて、カネに翻弄された昭和ニッポンを描く。初日だけに随所でぎこちなさが気になっちゃったけど、役者の魅力は十分だ。意外に年配男性も目立つ世田谷パブリックシアターの、前のほう中央のいい席で7500円。休憩2回を挟みたっぷり2時間半。
ケチなチンピラだが頭の切れる鯨井紋次(小出恵介)は、ヤクザの蔭山(小松和重)、高級クラブ経営者の冬香(ともさかりえ)、弟で弁護士、やがて代議士秘書になる静馬(木村了)と手を組み、怪しい不動産屋、さらに芸能プロダクションを興して成功する。やがて政財界を巻き込む一大スキャンダルに加担して…。
笑いが多くて楽しいものの、よくできたコメディというだけではないし、不思議感覚のSFタッチでもない。五輪、三億円事件、あさま山荘と現代史の要素を散りばめており、冒頭の懐かしい洗濯機が象徴的だ。倉持さん、テレビドラマを含めてホント芸風広いなあ。
憎めないワルの小出が、抜群の色気を示す。「今ひとたびの修羅」「MIWA」など、最近は昭和が似合う巧いワキの印象だったけど、存在感十分。特に高度成長という虹がはかなく消えた後、憧れの大理石の階段を実現した豪邸での、意地っ張りな造形が切ない。
一段と細く姿のいいともさかが、「鎌塚氏」シリーズとはうって変わって往年の「金環蝕」なんかのフィクサー然として、堂々と舞台を牽引。決して下品にならないのがこの人の凄いところ。小松、木村も達者に、哀しさを醸し出す。アイドル芹沢蘭役で初舞台の黒島結菜は可憐なだけに、終盤の大人の女は厳しいかな。
ペンギンプルペイルパイルズのお馴染み3人は、複数の人物で登場するのでちょっと混乱。飛び道具・玉置孝匡が振幅が大きくて、さすがだ。ぼくもとさきこの声を褒めるくだりが可笑しい。そして手堅く小林高鹿。
後方に2階があるセット。暗転や休憩で、丁寧に調度を替えていく。2幕はアイドル、プロレスという時代を映す設定とはいえ、流れが停滞する感じも。詰め込んだ要素の整理を含めて、今後の工夫に期待!
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