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ペール・ギュント

ペール・ギュント  2015年7月

ノルウェーの国民的作家で、近代演劇の創始者のひとりと言われるイプセンの初期作(1867年)を、谷賢一の翻訳・上演台本、劇場のアーティスティック・スーパバイザーである白井晃の構成・演出で。落ち着いた雰囲気のKAAT神奈川芸術劇場大ホール、上手寄り前の方で9500円。休憩を挟んで3時間強。

原作が上演を想定しない韻文(レーゼドラマ)のせいか、セリフが抽象的なせいか、どうも入り込みにくくてモヤモヤが残った。白井さんは「マーキュリー・ファー」をはじめ傑作が多いんだけど、時に難解だなあ。
物語は無軌道な若者ペール(内博貴)が放浪する、長大なお伽噺。トロルの一族になりかかり、モロッコで金儲けし、異国の女性に溺れ、エジプトで学者に…。散々冒険したのに、老いて帰郷し、死神の使い(凡人は溶かしてボタンにしちゃう!)と対峙すると、「自分は何者だったのか?」の答えが見つからない。結局、「ずっと愛の中にいた」と語る無垢な女ソールヴェイ(藤井美菜)の腕に抱かれて、人生を閉じる。うーん、帝国主義を背景にした19世紀人の、権威への反発と自我の揺らぎ、ということか。

これを今どうとらえるかか、が難しいところだ。設定は現代の紛争地帯にある廃病院。割れ窓の向こうで爆音が鳴り続き、避難民たちが力なく座り込むなか、医師たちが一人の胎児を救おうとしている。ペールの冒険は胎児の一瞬の夢で、世界の混乱を表現している、らしい。
広い舞台を生かした装置が面白く、床に砂をまいたり、一角から水がボコボコ沸きだしたり、天井板が落ちてきたり(美術はお馴染み「結びの庭」などの二村周作)。イメージが豊かなだけに、ちょっと消化不良だったかも。
主演の内は出ずっぱりで、膨大なセリフを危なげなくこなし、風貌も端正。ただ長尺の牽引力としては今ひとつか。藤井が可憐で芯があって、なかなか楽しみな女優さんだ。母オーセの前田美波里はさすが、コメディが達者。ほかに加藤和樹、堀部圭亮、橋本淳、三上市朗ら。

原作はロマンティックなグリーグの組曲(上演時のいわばBGMだったらしい)でも知られる。今回も音楽が重要なんだけど、それがフリージャズだったのには意表をつかれた。下手奥にトリオが陣取り、作曲とピアノはスガダイロー。全体に即興性が強い。シーンをつないでいく群集のダンスにキレがあり、振付は「赤鬼」などの小野寺修二。
客席には著名エコノミストの姿も。002

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