落語「黄金の大黒」「猫久」「船徳」「日和違い」「本郷刀屋」
瀧川鯉昇・柳家喬太郎二人会「古典こもり其の十」 2015年7月
大好きな喬太郎と、初めての鯉昇。肩の力が抜けていい感じの古典の会だ。大ホールがよく入った、東京芸術劇場プレイハウスの前の方で3700円。中入りを挟んで2時間強。
前座は正蔵さんのところの林家つる子で、長屋の説明から「黄金の大黒」。大家の倅が砂遊びをしていて、縁起のいい金の大黒を掘り出した。祝いの席に招かれた貧乏長屋の面々が、ボロの羽織を着て慣れない口上を述べる、という前半部分を元気よく。
1席目は最初、めくりが鯉昇だったけど、前座さんが直しにきて、「恨み節」で喬太郎登場。小さん流に言葉の誤り、犬に例えられるのと猫に例えられるのと、と振っておいて「猫久」。大人しいため、猫とあだ名される久六がある日、血相を変えて長屋に戻ってくると、女房が差し出す脇差をひっつかんで飛び出していく。驚いた向かいの熊が、床屋で侍から「その女房は偉い!」と聞かされ、帰って真似するものの、女房はお定まりのトンチンカンぶり。鰯を猫にさらわれるだけ、という滑稽噺をトントンと。猫久がそれほど怒った理由は説明しないところがシュールだなあ。
続いて鯉昇が、故郷・静岡県の争いを好まない気質、高校の後輩でノーベル賞学者の天野さんの気取らなさなどを語ってから、そのまま飄々とした雰囲気で「船徳」。勘当された質屋の若旦那が、よせばいいのに居候している船宿で船頭の真似ごと。客を散々な目に合わせた挙句、質屋だけに棹を流す、というオチだ。大川の夏風情で、気持ちよく笑わせてくれる。不思議なマでジワジワ笑わせるあたり、上手いなあ。
中入り後、再び鯉昇で上方の「日和違い」。出かけようとする米さんが、易者に「降る天気じゃない」と言われ安心していたのに、雨で散々。俵をかぶった異様な風体で文句を言うと、「降る、天気じゃない」というナンセンス。馬鹿馬鹿しくていい。
そしてラストは喬太郎。マニアックなウルトラマン話やら、「朋友、ForYou? 今日は古典だ」なんぞと余裕のギャグをかましつつ、なんと大作・牡丹灯籠の発端「本郷刀屋」。刀屋の店先で、若い武士の平太郎が、酒乱の黒川孝蔵に絡まれ、斬り殺すという因縁の始まり。黒川のどうしようもない行儀の悪さ、物静かな平太郎の精神が徐々に追い詰められていく緊迫感は、講談のよう。全く状況を理解していない野次馬たちの、滑稽なやり取りが見事な対比だ。堪能しました。
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