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能「碇引」

奉納梅若第三十八回 成田山蝋燭能  2015年5月

新緑の成田山新勝寺で、毎年5月第3土曜に開催するという能楽に足を運んでみた。1944年、54世梅若六郎が「碇引」を奉納されて以来続いているそうです。今年と来年は改築の都合で屋外の薪能ではなく、光明堂で蝋燭を使う形式。4階の広い講堂のようなスペースにパイプ椅子を並べた見所の、中央あたりで4000円。休憩をはさみ2時間半。

1部はまず仕舞2番。演目のクライマックスを謡いだけ、袴姿で演じるものだ。「竹生島(ちくぶしま)」は梅若英寿、「羽衣」は梅若美和音と、孫世代がりりしく。
続いて梅若会の連吟「融(とおる)」。男女20人ほどが並んで、クライマックス部分を謡う。
2部で法楽・火入れ式となり、僧侶と裃姿の小泉成田市長が厳かに、舞台四隅の蝋燭に点火。ただし照明も使うので、陰影がゆらめくような効果はない。
続いて狂言「磁石」。田舎者が大津の市場で、すっぱ(詐欺師)を出し抜き金をもって逃げる。すっぱが追いかけて脅すと、田舎者はなぜか自分は磁石の精だと言い出し、太刀を奪って反撃する。シテは人間国宝・山本東次郎、アドは山本泰太郎、山本凛太郎。シュールな話のようだけど、演者が見えにくかったし、筋もよくわからなくて残念。

休憩を挟んで、いよいよ成田縁起能「碇引(いかりびき)」。明治期、成田山は参詣客相手のビジネスなどで栄え、旦那衆の間で能楽の稽古が盛んだった。大野屋を定宿にしていた、国文学者で「鉄道唱歌」などを作詞した大和田建樹が、成田鉄道全線開通を記念してこの謡を作り、昭和になって梅若六郎が能にしたそうです。ただし今回は40年ぶりの上演とあって、梅若玄祥が型づけをした、ほぼ新作とのこと。
ある者(ワキ、宝生欣哉)が初めて成田山参詣に向かう道すがら、草を刈る2人連れ(ツレ、次代を担う梅若長左衛門、梅若紀彰)に出会って付き合ってもらう。花束を背負っているのが可愛いな。寺に着くと、額堂に大碇が納められており、九十九里の海底で漁を邪魔していたものを、不動明王の力で引き上げたという。
間(アイ)で山本凛太郎が、平安時代、寛朝大僧正が不動明王に祈願して平将門の乱を納めたと、開山の由来を語る。そして先ほどの2人連れが、今度は白い面をつけ、ご本尊に仕える矜羯羅(こんがら)童子、制吒迦(せいたか)童子という本来の姿で現れる。続いて、ひときわ音楽が高なり、ついに不動明王(シテ、人間国宝の梅若玄祥)が登場。碇を引き上げるさまを綱で表現する。面は成田山に現存するものだそうで、けっこう怖く、赤い衣装が鮮やかで、オーラがみなぎる。
後ろに控える笛は杉信太朗、小鼓・幸正昭、大鼓・亀井広忠、太鼓・観世元伯。さすがの大迫力でした!

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