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ヒダリメノヒダ

ヒダリメノヒダ  2015年4月

マームとジプシーの新作で、精力的に活動する藤田貴大が、作・演出のほか黒子として登場。乙女の思考のみずみずしさと、大人になってもずうっと脳内で反芻しているような、妙な心地よさは、いつも通り。表現にいくらか新しい工夫があって、今後の進化が楽しみです。
若者が多めのKAAT神奈川芸術劇場大スタジオ、予約3500円で自由席。この日はゲストにピアニストKanSanoが加わったバージョンで、ピアニカや歌が盛り上がる。休憩無しの1時間半強。

物語はお馴染み、作家がこだわり続ける北海道の海辺の町で、サトコ(吉田聡子)の中学時代の記憶がフラッシュバックしていく。命を絶った同級生シンタロウ(尾野島慎太朗)への苦い思い、家業の畜産業を継ぐリョウスケくん(石井亮介)との恋と別れ、故郷を出る選択。そんな断片が、リョウスケのチャーミングな妹ユリコちゃん(川崎ゆり子)や、元彼でボクサー志願のサトシ(波佐谷聡)、兄貴分の中島広隆という、ごく親しい数人とのやり取りで、淡々と綴られる。
サトコが子供時代、視力が落ちた左目で観ていたという、ぼんやりした世界の存在が印象的だ。繰り返される、観たくないものは観なくてよかった幸せな時代。そして実は、脳がとらえる視界と現実とはずれているかもしれない、という疑念。文学だなあ。

スタジオ両辺に客席を並べ、空間に2列の金属枠を吊るして細長いステージを構成。枠の間に長机や自転車などを出し入れして、シーンを展開する。登場人物がしゃべりながら、延々と並んで歩くのがいいリズムを生む。誰もが覚えがある、あの頃の時間の流れを思い出ささせて、懐かしい。
そのぶん今回はトレードマークのでんぐり返しやセリフのリフレインは控えめだ。川崎が歌う「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」が、ストレートに切なさを訴えかけてくる。まあ、感傷的過ぎ、乙女過ぎとも言えるので、相変わらず好き嫌いは分かれるだろうけど。
開幕前からステージでなにやら調理していて、いい匂いが漂ったり、ショッキングな解剖やら写真の現像やらもあって、面白い試みでした。


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