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運命の力

運命の力  2015年4月

ヴェルディがマリインスキー劇場のために書いた中期作を、スカラ座版で。個人的には震災直後、フィレンツェ歌劇場の来日公演をパスした時の演目であり、感慨深い。入りは今ひとつだけど、オペラ好きが集まった感じの新国立劇場オペラハウス、中央のいい席で2万520円。25分の休憩を挟んで3時間半。
金管が3度鳴る印象的かつ多彩な序曲から、華麗な旋律が盛りだくさんだ。指揮は気鋭のホセ・ルイス・ゴメスで、ベネズエラ生まれのスペイン人。東フィルが良く響き、歌手陣も堅実だった。

物語は言ってしまえば救いがなく、セヴィリアでの異文化差別と偶然の事故が、名誉のための復讐劇につながってしまう悲劇だ。宗教色もあって、「ドン・カルロ」を思わせる。
ヒロインのレオノーラ(グルジアのソプラノ、イアーノ・タマー)は、インカ王族の血をひくドン・アルヴァーロ(ベオグラードのテノール、ゾラン・トドロヴィッチ)と駆け落ちしようとするが、恋人が誤って父の公爵(久保田真澄、バス)を射殺してしまう。逃走したレオノーラは修道院のグァルディアーノ神父(バスの松位浩)を頼り、洞窟に隠棲する。一方、軍に身を投じたアルヴァーロは戦場でレオノーラの兄ドン・カルロ(イタリアのバリトン、マルコ・ディ・フェリーチェ)と出会い、一度は友人になるものの、正体がばれて決闘になる。結局、カルロ、レオノーラが落命、残されたアルヴァーロは宗教的な雰囲気のなか運命を受け入れていく。過酷だなあ。

2007年に新国立劇場の「カルメン」で聴いて以来だから、久しぶりのトドロヴィッチがのっけから声が良く伸びて、3幕の「天使のようなレオノーラ」など迫力たっぷり。外見はデニーロみたいだったけど。フェリーチェも達者に難役をこなし、トドロヴィッチとの2重唱、3幕1場の「命ある限り、また死んでからも」や4幕1場の「アルヴァーロ、無駄だ」を堂々と。タマーは地味な印象ながら、徐々に調子をあげ、2幕2場「あわれみの聖母よ」の細い声が素晴らしく、4幕2場のドラマチックな大アリア「神よ平和を与えたまえ」で最高潮に。
脇も贅沢で、兵士たちを鼓舞するロマの娘ケテワン・ケモクリーゼ(グルジアのメゾ)が大人気。3幕2場の軽快な「ラタプラン」が実に盛り上がる。2013年のスカラ座「リゴレット」で妹マッダレーナを聴いた美人さんですね。お馴染み松位さんも深い声がいい。

散漫になりがちで難しい演目ということだけど、演出は洒落ていた。設定を18世紀から1920年代に移し、3幕のオーストリア継承戦争はスペイン国民軍のキャンプに。不穏な赤い背景と、冒頭と終幕の四角い枠のセットが、だんだん狭くなって運命の行き詰まりを表現。2幕2場の修道院で合唱団がもつ蝋燭の光、そしてラストに舞い落ちる雪が美しかった。
この作品、スカラ座初演時にヴェルディが、当代一流指揮者のマリアーニから婚約者のソプラノ、シュルツを奪っちゃって、以後、マリアーニはワーグナーに傾斜したとか。いやあ、オペラってバックステージもドラマだなあ。

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