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三月大歌舞伎通し狂言「菅原伝授手習鑑」

松竹創業120周年三月大歌舞伎 昼の部 2015年3月

役者としてはもちろん、芸の伝承の上でも大きな役割を担っていたという三津五郎を失って、ショックが大きい歌舞伎界。71歳を迎えた仁左衛門が威厳たっぷりに、30代・菊之助、40代・染五郎に芸を伝える舞台を目撃する。休憩2回で5時間弱と長丁場だが、新歌舞伎座になって初めて桟敷席を選択。ゆったりしていて、上手側(東)前の方で美しい舞台が間近に迫り、快適だ。2万円。

上演は序幕「加茂堤」から。紅白の梅が導入らしく、明るくのどかな春景色だ。舎人桜丸(おおらかな尾上菊之助)と女房八重(時蔵の息子、中村梅枝がしっかりと)が、斎世親王(梅枝の弟、中村萬太郎)と苅谷姫(中村壱太郎)の仲を取り持つ。若い2組のカップルが雛人形のようで愛らしく、ちょっと色っぽい表現や笑いも。三好清行の探索に遭って親王らは遁走、桜丸が後を追う。残った八重が牛車を引くラストは錦絵のようだ。

二幕目「筆法伝授」からいよいよ、2010年の旧歌舞伎座さよなら公演でも観た、仁左衛門極めつけの菅丞相が登場。まず梅の紋が美しい菅原館奥殿の場で、勘当された源蔵(市川染五郎)、戸浪(梅枝)夫婦が呼び出され、御台園生の前(貫禄の中村魁春)と対面する。しおしおと恐縮する普通の人・染五郎、お父さんに似ているなあ。初代吉右衛門が復活した役という縁もあるという。
回り舞台で長い畳廊下を歩いて、厳粛な学問所の場へ。筆写をし遂げて筆法を獲得する。御簾が上がって、微かなお香の気配とともに現れる仁左衛門が、静かで上品で、冠が落ちるシーンも巧い。文机に縛られちゃうライバル希世が、可笑しくていいアクセントだ。
一転して暗い門外の場は、粛々と囚われる丞相、暴れん坊の梅王丸(片岡愛之助は拍手が多い)、立ち回りの末、可愛い菅秀才を袖と打掛にくるんで連れていく源蔵夫婦と、起伏に富む。

ランチ休憩後、三幕目が眼目の重厚な「道明寺」だ。4組の義太夫にのせ、和歌や伝承を散りばめていて知的な戯曲だなあ。
見せ場はまず「杖折檻」。三婆のひとつ、伯母の覚寿(片岡秀太郎)が、かばい合う立田の前(中村芝雀)と苅屋姫(丸顔が御姫様らしい壱太郎)姉妹を打ち据える。初役の秀太郎さん、小柄で白髪なのに迫力満点だ。
続く「東天紅」がびっくりの展開。土師兵衛(中村歌六)と宿禰太郎(でかい坂東彌十郎)が、よりによって嫁の立田の前の口を封じて池に沈めちゃう。鶏が鳴き、仁左衛門が木像による身代わりの奇跡を演じる。コミカルな奴の宅内(愛之助)の活躍で、覚寿が悪人を成敗。
大詰めは丞相名残だ。本物の丞相が出立するが、かたくなに苅屋姫と顔を合わせまいとする。鏡、池、大判の檜扇などの連続演出で、抑えきれない悲しみを表現。判官代輝国の菊之助が幕外の引っ込みまで、爽やかで格好いい。充実してました!

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