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結びの庭

M&Oplaysプロデュース「結びの庭」  2015年3月

大好きな岩松了さんの新作、もちろん演出も。洒落たミステリー仕立てであり、案外ストレートな恋愛劇であり、そしていつものように「読後感」が深い。ごく平凡な夫婦という社会の最小単位こそが、最も秘密をはらみ、共犯であるという真実。俳優たった5人の濃密な会話劇で、休憩無しの2時間半弱がちっとも長くない。老若男女幅広い演劇好きが集まった、下北沢本多劇場中央あたりで。

舞台は経団連会長の一人娘・瞳子(麻生久美子)と、弁護士水島(宮藤官九郎)の若夫婦が住むハイソな洋館。水島の秘書で弁護士見習いの近藤(太賀)と、家政婦・丸尾(安藤玉恵)が出入りしている。夫婦は5年前の刑事裁判をきっかけに知り合っており、どうやらそこに裏がありそう。事件関係者の親戚という末次(岩松)が現れて、仲睦まじい日常がどんどん不穏になっていく。

幸せな家庭を象徴するような、芝生の庭がポイントだ(美術は二村周作)。玄関ではなく、たびたび庭から不意打ちのように人が現れたり、瞳子が執着する庭で洗濯物を干すという家事が、皮肉にも暗転したり。
明るい笑いとダンスをまじえつつ、微妙な関係性のねじれがじわじわと胸をざわつかせていく。この面白さ、すっかり癖になってます。今回は特に、不安定な階段を使って破綻を予告する幻覚シーンとか、ラストでオープニング同様に幕でセットを隠して、人物にフォーカスするとかの仕掛けも鮮やかだ。

話題沸騰の宮藤が評判通り、ひたすら瞳子を愛する、かなりの2枚目さんだ。スーツ姿で色気もあって、新境地かも。麻生はいつものように声と立ち姿に存在感があるけど、闇を抱える役回りのせいかトーンは抑制ぎみ。太賀のちょっと幼い切なさが特筆もので、ますます楽しみな役者さんだ。この人、なんだか仔犬を思わせるんだなあ。とぼけた感じの安藤は、最後に謎をさらっていき、達者な曲者ぶり。

大きい回り舞台がやけにぎしぎし鳴るので少し不安だったけど、無事終演。松尾スズキさん、笠井信輔さん、ともさかりえさんら客席も豪華でしたね(ともさか、綺麗過ぎ!) 東京を含めなんと全国8カ所で公演。

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