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立川談春「へっつい幽霊」「百年目」

立川談春「百年目」の会 三十周年記念落語会もとのその一  2015年3月

談春さん入魂の高座を聴いた。師匠自身、そして志の輔の入門のきっかけになったという談志三十周年独演会の会場、国立演芸場で。この人、落語への思い入れがどんどん強くなってるなあ。
2月から全国を巡回している記念公演の第2部、春らしい百年目シリーズで、こぢんまりと贅沢な空間だ。5日連続の2日目を、ウェブ限定抽選でゲットできたのはほんと、ラッキーだった。前の方上手寄りで4320円。10分の中入りを挟み、一人でたっぷり2時間半。

出囃子もそこそこに登場。拍手が巧い、と客席の空気を探り、中村屋とのひりつく思い出(歌舞伎座さよなら公演大顔合わせの忠臣蔵で、あえて幕の途中で楽屋に駆けつけたという気遣い合戦)など、前日は「道灌」とかだったけど今日は長いのを、と振ってから1席目「へっつい幽霊」。思えば2010年に談志さんで聴いた噺だ。サゲはもちろん、同じスタイルで「半分くれ」。滑稽だし、割合さらさら進むんだけど、人物はくっきりしている。凄みを含んだ遊び人の熊、能天気な若旦那、そして死んでもギャンブル好きが抜けない幽霊。
そのまま長いマクラのような談春半生記へ。覚えたてのへっついを、分不相応なのに高座にかけちゃって談志に謝った、「できる」と芸とは違う、今でも、志らくに対しても俺はできているかと聞く、さらに談志との日々を描いた「赤めだか」ドラマ化の配役の自慢(二宮君が談春なのは、向井理の水木先生に次ぐ)などと、後半につながる話でした。

短い中入り後に、噛みしめるように、さっきのへっついはうまくできた、などと、強烈な自負と聞き手への懐疑などを語ってから、いよいよ「百年目」。いや~、これはこってりでした! 2013年に志の輔さんで聴いた時は、理詰めでマネジメントの極意という気がしたけど、今回は師弟という、現代では特殊になった、けれど大人が互いに認めるとはどういうことか、という普遍性をはらんだ濃密な人間関係のドラマになっていた。
冒頭の大番頭さんの小言はネチネチと実に厳しく、着替える駄菓子屋のシーンでおばちゃんが旦那との関係をアドバイスしちゃう。花見のところはトントン進んで、旦那にばれてからの一夜をじっくり。首にはなりたくない、でも許されたら許されたで辛い、と身をよじって、大詰め旦那とのやり取りへ。「百年目」の台詞の後に、旦那が肩をもませながら番頭を認めた経緯を振り返るシーンを追加してしみじみとさせ、ナンエン草でサゲ。談志との関係に重ねてる感じで、思いがぎっしり詰まっていて重い。
上方の大ネタとあって、先日亡くなられた桂米朝師匠へのオマージュになった形だけど、やっぱり小さんは凄かった、と嘆息して幕となりました。

客席は周防夫妻、安井順平、大窪人衛の顔が見えた。そしてロビーにはドラマでの談志役、ビートたけしからの花も。東京は追加公演もあるらしい。正直、気持ちよく笑って泣いて、という高座ではないけれど、ひとりの噺家の軌跡を目撃する意味で必見かも。

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