蒲団と達磨
サンプル「蒲団と達磨」 2015年3月
岩松了の1989年岸田國士戯曲賞受賞作を、「自慢の息子」の松井周が演出。割と若者が目立つKAAT神奈川芸術劇場大スタジオ、中央のいい席で3700円。休憩無しの2時間。
くたびれた感じの和室に、寝具が2組。夫婦(お馴染み古舘寛治、安藤真理)は娘の結婚式を終えたばかりだ。夫の妹(辻美奈子)や妻の弟夫婦(奥田洋平、不思議キャラの野津あおい)、近くで2次会をしていたスナックの常連仲間、果ては妻の前夫までが出入りする。
再婚同士の夫婦のすれ違いを軸に、登場人物それぞれが抱える意外な秘密、屈託が降り積もっていく。岩松さんらしい小津ばりの日常の、断片的な会話劇だ。「え?」と聞き返す特徴的なフレーズはさほど顕著ではないけれど、階段や水、セリフの中だけに登場する寝たきりらしき老母の存在など、「らしさ」がそこここに。悲哀と誤解。バブル真っ盛りの89年にこの戯曲が評価されたのは、凄いことかも。
今回の上演、笑いも多い。だけど不穏さがお洒落にならずに、どこか不潔でマイナスオーラが強いのは演出家のカラーなのか。何故か家じゅうで恐らく最もプライベートな一間に、他人が集まってきちゃうとか、夫がパジャマ姿で妻がずっと留袖のままとか、面白い設定なのに、どうも乗り切れなかったかな。怪しさ満点の家政婦役、田中美希恵と、飄々としたマイクロバス運転手の古屋隆太がいい味。
« 落語「三枚起請」「かぼちゃ屋」「雛鍔」 | トップページ | マノン・レスコー »
「演劇」カテゴリの記事
- ドードーが落下する(2025.01.18)
- 消失(2025.01.25)
- 2024年喝采尽くし(2025.01.01)
- 天保十二年のシェイクスピア(2024.12.28)
- モンスター(2024.12.28)
コメント