志の輔・談春・談慶兄弟会 2015年3月
立川志の輔・立川談春揃い踏みという贅沢さにひかれて、上田市交流文化芸術センター「サントミューゼ」の落語杮落とし特別公演に遠征した。開演前の誘導が大変そうだなあ、と思ったら、なんと1000人規模の立派な大ホール、かなり前のほう下手寄りで5000円。中入りを挟み2時間半。
幕が上がるとびっくり、3人が並んで口上。司会役は談春で、上田市出身、真打昇進10年の立川談慶を盛り立て、定期的に落語会ができるようにと、まずは今回の座組みになったらしい。談春は、慶大経済出身、ワコールを経て入門したという変わり種の談慶のことを、上田の商店街を挨拶して回るなど、真面目な奴だとほめ、談慶さんは恐縮しきり。真面目は土地の気質なのか、開幕前に市長や談慶のお母さんが楽屋に挨拶に来たことなどに触れてから、いったん幕。
そして1席目は、談慶。志の輔と談春だけだったらチケットは2万円かも、談志と病後に筆談した思い出、などを披露してから「洒落小町」。亭主の浮気に悩む女房が歌でたしなめようとするが…。粋な噺だけど、どうもはきはきし過ぎて乗り切れなかったかな。終わったらなんと自分で座布団を返してました。
続いて談春。談志が大事に冷凍していた高級食材を、談慶が誤ってダメにしちゃった逸話などを紹介してから、初めて聴く「かぼちゃ屋」を短縮バージョンで。
さすがにのっけからグフグフ笑っちゃう与太郎の憎めない造形や、緩急のリズムが巧い。上方の「みかん屋」がもとで、小さん、談志が演じていた噺とのことで、呑気な与太郎に叔父さんが南瓜の振売を命じるだけのストーリーなんだけど、「よく上を見て(掛け値をして)」と言われて与太郎が天を仰ぐなど、とぼけた味が可笑しい。「値をつける」というビジネスの基本が題材だし、何故か路地の住人が与太郎を助けちゃう展開も気持ちよくて、いい噺です。
20分の中入り後に、トリで志の輔がたっぷりと。いよいよ来週、金沢まで開業する北陸新幹線のスピードのことや、落語初心者向けの連続小咄など、導入部分はお正月のパルコで聴いたものと同じなんだけど、さすがに飽きさせない。そして落語の人情は時代を超える、と振ってから「新・八五郎出世」。
2007年に「八五郎出世せず」のタイトルで聴いたネタだ。大工の八五郎と、人の好い大家との軽妙なやりとりから、広い屋敷を歩いていくところまでは、とんとんとテンポよく。大きな杯で酒をぐいぐいあけて、酔っ払っていくあたりからはじっくり。塩と味噌だけで呑めるからご馳走はいらない、宵越しの金は持たないし、道具さえあれば稼げる。八五郎が言い募る職人の気概が、爽やかで引き込まれる。そして母の情で泣かせ、士分取り立てを勘弁してやってくれ、という「ツルの一声」でサゲ。安定感あります。
出だしは音響が聴きづらかったけど、修正した感じ。最後は再び3人並んで挨拶し、志の輔さんの3本締めで幕となりました。