三人姉妹
シス・カンパニー公演KERA meets CHEKHOV vol.2/4 「三人姉妹」 2015年2月
ケラリーノ・サンドロヴィッチがチェーホフ4大戯曲の上演台本・演出を担当するシリーズ2本目。1901年初演の群像劇を豪華キャストで。シアターコクーンの下手寄り前の方で9500円。休憩を挟み約3時間。
退屈な田舎町にあるプローゾロフ家。秩序の変化を予感させる帝政末期、自在に詩を引用するような知識階級の登場人物たちは、誰もが何かしら、閉塞を抱えている。
真面目な長女オーリガ(余貴美子)は教師の仕事、そして元将軍の父が遺した家の維持という責任に疲弊。感情の起伏が激しい次女マーシャ(宮沢りえ)は俗物の夫クルイギン(山崎一)にうんざりして、新任の砲兵隊長ヴェルシーニン(堤真一)との不倫に走る。幼い三女のイリーナ(蒼井優)は華やかなモスクワへの帰還を夢見つつ、やたら前向きな男爵トゥーゼンバフ(近藤公園)とシニカルな大尉ソリョーヌイ(今井明彦)を、意図せずに翻弄しちゃう。
卑屈な長男アンドレ(赤堀雅秋)は挫折してギャンブルに溺れ、マイペースを貫くナターシャ(神野三鈴)と殺伐とした結婚生活を送る。乳母車を押す姿は悲哀たっぷりだ。年老いた軍医チェプトゥイキン(段田安則)は古い新聞を読みながら、すべてを傍観するばかり。全員があまり幸せにはならず、ただ現実を引き受けていく。
邸宅のサロン、寝室、玄関前の白樺の庭というごくオーソドックスなセットに、ドレスや軍服が色鮮やか。全員が不満を吐露してばかりいるけど、セリフを短く畳みかけるので、テンポがよく、現代的だ。一人が喋っている間、隅っこでほかの人物が小さく反応してたり、別の出来事が進行していたりして、人間模様がきめ細かい。
宮沢はいつものように圧倒的にたおやかだけど、オーラは抑えめで、むしろコミカルさが際立つ。ところどころ、いいリズムで堤、赤堀が笑いを挟みこみ、それがかえって人生の空疎を強く印象付ける。山崎が安定感抜群に、全体をまとめた感じかな。
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