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歌舞伎「雷神不動北山櫻」

十二月大歌舞伎 2014年12月

2014年の歌舞伎納めは、ぐっと冷えてきた歌舞伎座夜の部で、若々しい市川海老蔵が奮闘5役の通し狂言「雷神(なるかみ)不動北山櫻」。伝統をふまえて現代感覚の笑いあり、スペクタクルあり、サービス満載のエンタテインメントを楽しむ。円安のせいか外国人客が目立つ気がする1F下手寄り、花道がよく見える席で1万8000円。2回の休憩を挟みたっぷり4時間。

歌舞伎十八番「毛抜」「鳴神」「不動」の元になった狂言をベースに、平成20年から上演しているという作品だ。旱魃の社会不安を背景にした陰謀劇に、マジック要素が加わる。平安朝の設定だけど、見た目は江戸風だったり自由自在。

冒頭で文楽風の東西声から人形が配役の口上を述べ、序幕・神泉苑の場では並んだ登場人物が無表情な「人形身」からスタート。「忠臣蔵」の大序を真似た趣向だそうで、必然性を思うと疑問の声もあるけど、ファンタジーらしい導入だ。
このシーンでは、雨乞いに来た陽成天皇の異母兄で、皇位を狙う早雲王子(海老蔵)グループと、関白基経(ノーブルな市川門之助)グループの対立がよくわかる。海老さまがすっきり美しく、対する基経派の小野春道(市川右近)、文屋豊秀(片岡愛之助)がいいバランスだ。早雲が手下に与える磁石が後の伏線に。
続く大内(御所)の場は海老蔵が一転、陰陽師・安倍清行をコミカルに。ふにゃふにゃだし好色だし。早雲への早替りがあり、家臣・瀬平(中村獅童)は小野家の腰元から重宝「ことわりや」の短冊(小野小町の歌で、雨乞いに効力がある)を奪う。

二幕・小野春道館の場が「毛抜」で、座紋鳳凰と市川宗家の三升の提灯が並び、舞台左右に看板がかかって、まさに錦絵の世界だ。敵味方が対になった衣装などの様式美も華やか。
小野家の息女・鏡の前(福助の長男・中村児太郎がたおやか)は豊秀への輿入れを前に、髪が逆立つ奇病に苦しんでいる。乗り込んできた豊秀の使者・粂寺弾正(海老蔵)は、若衆・秀太郎(尾上右近が若々しい)や腰元・巻絹(ベテラン市川笑三郎)を次々口説いちゃって、とんでもない奴だが、毛抜や煙管の動きで奇病のからくりを見破る知恵者でもあり、なかなか現代的で複雑な造形だ。連続見得が格好いい。
後半は弾正が怒涛の活躍。瀬平を手裏剣で仕留めて短冊を取り返し、さらに磁石を操っていた忍びや黒幕の家臣もやっつける。当主・春風(尾上松也)がお礼に渡した名刀を振りかざし、花道で観客に感謝してから意気揚々と引っ込む姿に拍手。

食事の後の三幕、木の島明神境内の場は、少し軽い雰囲気になり、豊秀と安倍清行の家臣が清行を探して客席を歩く大サービス。愛之助は「海老蔵は今日誕生日です」などとおしゃべりしてました。そしてすっぽんから現れた清行が、現在の旱魃は早雲の陰謀によって、鳴神上人が竜神を滝に閉じ込めているせいであり、雲の絶間姫を差し向けるよう教える。
続く北山岩屋の場が、お待ちかね本日の山場「鳴神」。文楽版「粂仙人吉野花王」を観たことがあるが、本家の歌舞伎版は初めてだ。坂東亀三郎、亀寿兄弟の白雲坊、黒雲坊が狂言風の演技で笑わせてから、いよいよ雲の絶間姫(坂東玉三郎)が登場。まず仕方噺で花道の七三、次に舞台下手寄りと、上手の庵に閉じこもっている鳴神(海老蔵)との間をじりじり詰めていき、癪をおこして誘惑しちゃう。かなり際どいシーンなんだけど、この2人だと美しくて下品にならない。
一緒になろうと言い交した喜びで、鳴神は酩酊。思えば鳴神って、修行ばかりしていた世間知らず。もともと帝誕生の功労者だったのに、早雲の野望で北山戒壇堂建立の約束を反故にされ、いじけてしまった気の毒な人だ。未熟な人物像が海老蔵の雰囲気に合っている。対する姫は才色兼備のうえに、実力者・豊秀との不倫を成就する覚悟で乗り込んできたわけで、はなから勝負にならない。だからこそ、姫が首尾よく雨を降らせるとき、鳴神に向かって詫びるのかな。姫が去った後は、鳴神の豪快なぶっかえり、六方が格好いい。

大詰はお約束の立ち回りだ。大内塀外の場でまず豊秀が見せ、朱雀門王子最期の場で早雲が、花道で梯子に上ったりして大暴れだ。大薩摩で盛り上がった後、仕上げは不動明王降臨の場、すなわち「不動」。照明、スモークやマイクを使い、不動明王に扮した海老蔵が事件解決を宣言して、浮かび上がるというスーパー歌舞伎風スペクタクルだ。市川宗家の成田信仰を表し、伝統にのっとって客席からお賽銭が投げ入れられてました。
とにかく家の芸、荒事にかける海老蔵の気負いと努力が感じられる舞台。一時に比べ発声はぐんと良くなったし、華があるけど、ご意見番が玉三郎だけにみえるところが不安要素かな~ 周囲の声に耳を傾けて伸びてほしい人です。

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