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新しい祝日

イキウメ「新しい祝日」  2014年12月

劇団イキウメの新作はシニカルなファンタジーだ。作・演出の前川知大は2014年、スーパー歌舞伎への参加や自作の蜷川演出など、話題が多かった。締めくくりのホームグラウンドでは、しっかり歯ごたえを感じさせる。
テレビでお馴染みの俳優が出るわけではないのに、けっこう観客は幅広い。楽日に滑り込んだ、東京芸術劇場シアターイーストの中央あたりで4200円。休憩無しの約1時間40分。

物語はどこにでもあるオフィスから始まる。サラリーマン汎一(浜田信也)がひとりで残業していると、どこからともなく道化(安井順平)が出現。アリスに登場するウサギみたい。そして生れ落ちてからの追体験へと、いざなわれる。
子供のころの他愛ない遊びとか、部活でのメンバーの対立、社会人になってからの出世競争。当初はルールを何も知らなかった無垢な汎一が、周囲に合わせているうちに、上手な立ち居振る舞い、空気を読むことを覚えていく。でもそれは本当に、あなたが望んだ生き方なのか?
皆で熱心にランニングしているのに、いったい何の部活なのかを誰も語らない、というシュールなシーンに背筋が寒くなる。

登場人物の役名はわかりやすく、慈愛(伊勢佳世)、権威(盛隆二)、敵意(大窪人衛)、公正(岩本幸子)、打算(森下創)、愛憎(橋本ゆりか)、そして真実(澄人)。大道具小道具はシンプルな段ボールや折り紙で構成しており、抽象化が巧みであると同時に、押せば簡単に崩れちゃうような現実の空疎さを突きつける。

タイトルの「祝日」とは、過去に遡って生まれ直すというイメージだろうか。いつものSF的な飛躍やホラーの要素は抑えめで、ごくごく平凡な日常に笑いをまぶしつつ、世間の欺瞞と同調の息苦しさをあぶりだす。ひょっとすると、これって今の社会の中核世代が、共通して抱いている感覚なのかも。苦みが残る舞台だ。

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