2014年喝采づくし
2014年のエンタメまとめ。まず人間国宝の住大夫、源大夫が去って寂しくなってしまった文楽界。キング住師匠の引退公演「沓掛村の段」にしみじみしたなあ。これからは咲大夫や、玉男襲名が決まった玉女(「勧進帳」の弁慶にスケールがあった)、勘十郎(「女殺油地獄」の与兵衛が極め付け)、そして若手で幸助、寛太郎らを応援するぞ! 清治作曲のシェイクスピア劇「不破留寿之太夫」も愛嬌があって楽しかった。
世代交代は歌舞伎界も同じ。海老蔵が「雷神」で粂寺弾正などを、市川染五郎が「勧進帳」で憧れの弁慶をみせたほか、菊之助の「白浪五人男」弁天小僧、勘九郎、七之助兄弟の「鰯売」も出色だった。定期的に型の解説を聴くチャンスを得たので、これからも勉強しよっと。
オペラは巨匠ムーティのローマ歌劇場公演で、正調イタリア節の「ナブッコ」を聴く。ドミトリー・ベロセルスキー(バス)や合唱が圧巻。その後、楽団員のストなどでムーティが辞任しちゃって驚いたけど。大野和志が凱旋したリヨン歌劇場「ホフマン物語」も変化に富んでいて、パトリツィア・チョーフィ(ソプラノ)が聴かせた。
新国立劇場では尾高忠明芸術監督の締めくくり、「死の都」が甘美な旋律と凝った装置で秀逸だった。後継の飯守泰次郎は一転、開幕をワーグナー「パルジファル」で勝負し、エヴェリン・ヘルリツィウス(ソプラノ)が大迫力でした。METライブビューイングでは「マクベス」のディーバ、ネトレプコがあっぱれの悪女ぶり。カウフマン来日キャンセルなんて、「予想通り」のがっかりもありました~
演劇はたくさん観ちゃってなかなか整理がつかないけど、蜷川幸雄演出「ジュリアス・シーザー」が圧倒的だったな。ステップアップした感じの藤原竜也に吉田鋼太郎、阿部寛、横田栄司の豪華キャストが大階段で激突。そして大好きな岩松了さんは再演「水の戯れ」の、人間存在の不確かさが今なお鮮烈でした。
楽しみな若手陣では、前川知大が社会の欺瞞を感じさせた「新しい祝日」、倉持裕「靴」の切なさ、藤田貴大「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと―」の愛らしい不器用さが際立つ。岩井秀人の「おとこたち」は老いのリアルを描いて新境地だったかも。
翻訳劇では何故かアイルランドづいていて、骨太の「ビッグ・フェラー」(リチャード・ビーン作、森新太郎演出)、温かい「海をゆく者」(コナー・マクファーソン作、栗山民也演出)が印象的。「おそるべき親たち」(ジャン・コクトー作、熊林弘高演出)の皮肉っぽさや、「背信」(ハロルド・ピンター作、長塚圭史演出)のひりひり感も見応えがあった。毛色が違うところでは、ヨーロッパ企画「ビルのゲーツ」に大笑い。
俳優で目立ってたのは「太陽2068」の成宮寛貴、「ロミオとジュリエット」の菅田将暉、「皆既食」の岡田将生、「わたしを離さないで」の多部未華子、「日のようにさみしい姉がいて」の宮沢りえ、「抜け目のない未亡人」の大竹しのぶ、等々…
落語は個人的に2大巨頭と思っている、談春の「文七元結」と喬太郎の「宗悦殺し」に引き込まれた。談春は自意識満載、喬太郎は人を食っていて自由自在と、対照的ながら共に目が離せません。ベテランの小三治、権太楼、新進の三三、一之輔も良かった。そして講談は神田春陽の真打昇進で、「木津の勘助」など。地味なジャンルも頑張ってほしいです!