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水の戯れ

M&Oplaysプロデュース「水の戯れ」  2014年11月

待望の岩松了さん代表作のひとつを観に行く。1998年初演作の再演出だ。ザ・岩松の、人の心のわからなさ、人間存在の不可解さがひしひしと。演劇好きが集まった感じの本多劇場、中央あたりでお得な6500円。休憩を挟んで約2時間半。

昭和な雰囲気漂う「テーラー北原」のワンセット。生真面目な仕立て屋・春樹(光石研)は40年配にもなって、亡き弟が遺した美しい妻・明子(菊池亜希子)に、もう長いこと想いを寄せている。ふらりと戻ったヤリ手っぽい兄・大造(池田成志)とずけずけモノをいう中国人の恋人・林鈴(瑛蓮)、店に入り浸っている気のいいおまわりさん・増山(近藤公園)がからんで、前半は笑いの多いラブコメ風だ。
ところが2人が結婚して、幸せ一杯なはずの後半は雰囲気が一変。大造や明子の上司・森田(岩松さん)、若い女・菜摘(根本宗子)の言動から、春樹は明子に疑いを抱きはじめ、歯車が狂っていく。

登場人物の誰もが本音を言わない、そして舞台のどこかに階段がある。勝手に岩松劇の2大ポイントだと思っている特徴が、本作にも。特に「階段」は今回、店舗と和室の中央にどーんとあって、存在感がでかい。人物が2階に上がっていくシーンが頻繁にあり、その先の、観客には見えないところで果たして何が起きているのか、不安がかきたてられる。
そして繰り返し唐突にぶちまけられる「水」が、平凡で微笑ましい日常の陰にひたひたと寄せる危うい歪みを、強く意識させる。タイトルはラヴェルのピアノ曲からとったそうだけど、この水のイメージが、衝撃のラストシーンに見事につながっていて鮮烈だ。

普通の男・光石が、振幅の大きい人物像を見事に表現。すらっとした立ち姿の菊池も美しく謎めいていて、不穏でいい。そういえば「ハルナガニ」で観たときは、「やけに指が長い」という印象だけだったなあ。要注目の女優さんだ。池田は相変わらずの曲者ぶり。大人のメロドラマは、観終わっても胸のざわざわが後をひきますね。
客席には宮藤官九郎、田中哲司、平岩紙… そしてなんと、初演で明子を演じた樋口可南子さんが! 綺麗だった~

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