落語「穴子でからぬけ」「転失気」「棒鱈」「たちきり」「華やかな憂鬱」「三人無筆」「文七元結」
第二回師匠と弟子四人寄れば一門の智恵~柳家さん喬一門師弟五人会~ 2014年11月
柳家さん喬一門会の夜の部に行ってみた。綺麗なよみうり大手町ホールの前の方、中央。なんと、さん喬2席、喬太郎2席を含む真打4人で6席もあって4000円とお得バージョンだ。仲入り10分を挟みたっぷり3時間。
前座は本日は3代揃い踏みというさん坊で、トントンと「穴子でからぬけ」。生意気な子供が大人に謎をかけ、まんまとお小遣いをせしめる。「からぬけ」とは出し抜くの意味だそうです。
本編冒頭はいきなり喬太郎。昼の部もあって疲れた、あまり考えずに喋ってる、とグダグダのマクラから「転失気」。三三さんで聴いたことがある滑稽噺を、「芝浜聴けると思うなよ」って憎まれ口もチャーミングに。他愛無いけど知ったかぶりの和尚、無邪気な小僧と人物が際立つ。
続くさん喬師匠は、一門会だと弟子をライバル視しちゃう、とつぶやき、先代小さんの楽屋やパチンコの思い出などから「棒鱈」。これは以前、談春さんで聴いた古典だ。手練れというか、タイトルにもなっている野暮天=田舎侍の訛りとかはけっこう適当だし、ゆるゆるしてるのにちゃんと聴かせちゃう。
前半の〆は喬志郎で、芸妓と線香の解説から「たちきり」。滑り出しに言い間違いがあったりして、ちょっと乗りにくかったかな。
後半も喬太郎からで、喬志郎に泣かされるとは驚き、さん喬師匠は米国公演に熱心なことで知られるけど自分は海外はごめんだ、国内でも行ったことがないところがある、と語り、鳥取関連イベントに出演した時の拍子抜けエピソードなどから新作「華やかな憂鬱」。冒頭、歌舞伎町キャバクラの雇われ店長のファンキーな朝礼から、得意の暴走が炸裂して爆笑だ。店長は田舎に帰る前の思い出に、東京の穴場に行きたいとリクエストしたのに、案内役の弟分が連れていくのは何故か、板橋とか北区とか微妙なところばかり。この穴場巡りの行き先にはいろんなバージョンがあるそうで、たっぷり笑わせてくれる。ラストはなんと歌舞伎町に畑を作ったところ大繁盛、「天保水滸伝から出世キャバクラ」という落ちでした。拍手。
続いて喬之助で、ここまでのマクラで弟弟子を豚呼ばわりしたとか悪口を言われたけど、そんなことない、とかぼやいてから、柳家伝統の「三人無筆」。源さん、熊さんは取引先の弔いで帳付けを頼まれたけど、ともに字が書けない。仏の遺言にかこつけて銘々付けにしたり手習の師匠に頼んだり、果ては遅れた弔問客を来なかったことにしちゃう。安定してます。
トリはさん喬さんで、マクラはそこそこに、まさかの大ネタ「文七元結」。いやー、泣けた。ストレートに人情を伝える演出で、特に佐野槌の女将のくだりがしみじみと染みる。吾妻橋のシーンは、50両も目の前の命には代えられない、という、どちらかというと情けない長兵衛像だけど、ラストでは一度出したものを受け取れるか!と頑張っちゃう江戸っ子ぶりが痛快だ。楽しかったです!