靴
ペンギンプルペイルパイルズ#18 「靴」 2014年10月
作・演出倉持裕。演劇ならではの不思議体験が絶妙だ。不思議の国のアリスめいた冒険談でクラクラし、さらに切なさ、懐かしさがかきたてられる。
2012年に観た「ベルが鳴る前に」以来、2年半ぶりの劇団での新作。鎌塚氏シリーズなど劇団外のコメディも楽しいけど、やっぱりこのパラレルワールドはたまらないなあ。ザ・スズナリの中央あたりで4500円。休憩無しの1時間半。
物語は「靴」という共通の単語から、次々に呼び覚まされる記憶の断片のようなもの。女子高生の真知(金澤美穂)と理々子(愛名ミラ)は、事情があって、よく一緒に靴を買っている。真知の父(玉置孝匡)と靴店に出かけて道に迷ううち、夢の風景を探している青年(大和田健介)と出会う。その風景の中にある小学校で、上履き盗を見張る教師たち(近藤フク、小林)の滑稽なやり取りに、理々子の小学生時代の事件や、年ごろに成長した真知と彼氏(吉川純広)、家族(玉置、山田、ぼくもとさきこ)のエピソードがシンクロ。さらに殺人事件を追う刑事たち(玉置、山田真歩、小林高鹿)と、幻想的な面接官(小林)のシーンも絡まっていく。
反発しあいながら、実は仲がいい金澤と愛名がなんとも微笑ましい。「かぶらないようにしてね」という靴をめぐるやり取り、可愛いなあ。大和田も爽やかだし(大和田伸也の息子さんですね)。そしてもちろん、劇団の飛び道具キャラ、ぼくもとさきこや小林高鹿が期待通り達者に笑わせ、山田真歩は振幅の大きい刑事と母とを演じ分けて、いい味だ。
複雑かつ目まぐるしい展開を支える装置が秀逸。狭いステージを靴箱で囲み、床に空いた穴が縦に、また白い布を使った雪道が奥行方向に変化をつける。美術は中根聡子。面白かったです!
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