ジュリエット通り
Bunkamura25周年記念/シアターコクーン・オンレパートリー2014「ジュリエット通り」 2014年10月
大好きな岩松了さんの作・演出。人の世に絶えない争いごとのタネ、「誰かを敵とみなす」とはいったい何なのか? セリフの断片から2重3重の意味を考えさせる。岩松節です。ジャニーズファン一色のシアターコクーン、前の方中央のいい席で1万円。休憩を挟んで約3時間。
セットはなんてことないリアルな住宅街だ。かたや日本家屋の縁側、かたやバルコニーがある洋館、そして2軒の間に路地「ジュリエット通り」。日本家屋に住む資産家・田崎昭一郎(風間杜夫)は、向いの娼館「枯淡館」に入り浸っている。若い娼婦スイレン(大政絢)を家に引き入れ、後妻スズ(高岡早紀)との間は微妙。息子・太一(安田章大)はそんな父に反発している。しかし収賄事件を契機に昭一郎の立場は暗転、近隣でネオナチめいた活動を展開する「ジープの一団」もからんで、不穏な空気が高まっていく。
劇中には家庭と娼館以外にも、いくつかの2項対立が登場する。客を取り合うダリア(池津祥子)と若手のサクラ(東風万智子、長身が綺麗)とか、母ボタン(烏丸せつこ)と暴走気味の娘キキ(超細い趣里、歌うのは「恋の季節」)とか。憎みあうわけでもないのに、なぜ両者は隔たってしまうのか。
不器用な市井の人々の愛憎劇にみえて、外人部隊志願の若者、「国防諮問委員会」が登場して今を意識させる。過去と現在が同居しているような時間の歪みに浮かび上がる、作家の鋭敏さ。「アンナ・カレーニナ」の脱力する駄洒落、そして架空のカレーを食べるシーンが、ささやかな一家団欒の幻を象徴する。
お馴染みのダンスシーンのほか、パネル状の鏡、風にあおられる古新聞、天井から振り注ぐ本水の雨など、いつになく大振りの仕掛けがたっぷりで変化に富む。出演陣は高岡が色っぽくて存在感抜群、風間は期待通りの曲者ぶりだ。若手はみな生真面目に健闘してたけど、切なさが今一つ。「ジュリエット」の逸話、未熟な若者の恋物語はさほど際立たなかったかも。ほかに渡辺真起子、裵(ペ)ジョンミョン、大鶴佐助、石住昭彦ら。
客席には宮藤官九郎、倉持裕の姿も。そういえば偶然にも、先日観た倉持さんの「靴」にイメージが重なる、いいシーンがありましたね。
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