小指の思い出
小指の思い出 2014年10月
芸術監督・野田秀樹による1983年初演の初期代表作を、1985年生まれの気鋭・藤田貴大が演出する話題の舞台だ。よく入った東京芸術劇場プレイハウス、前の方の席で5500円。休憩無しの約2時間。
赤木圭一郎(勝地涼)は子供の時間を取り戻す薬(歯磨き粉)の広告に魅かれ、柏羽聖子(飴屋法水、青柳いづみ)と巡り合う。シーンはかつて赤木が通った「当たり屋専門学校」の情景、そして中世・ニュルンベルクで息子を犠牲にした女当たり屋と魔女狩りの物語に転じ、彼女の「妄想の息子」は1828年のニュルンベルクで地下牢に幽閉されていた、少年カスパー・ハウザーの伝説につながっていく。
「妄想しよう」「もう、そうしよう」とか、小指の指紋(自己)がほどけて空に舞い上がる凧の糸になるとか、独特の言葉遊びやめまぐるしく時空を跳躍する連想がてんこ盛り。難解な母子のストーリーで、正直、何が何だかついていけなかったところもあったけど、まずは体感する劇世界なのかな。
藤田は自作以外の演出は初めてという。今回は分かり易く伝えるというより、自分流にアレンジしつつ、詩情をそのまま見せている印象。広い舞台の後方でバンド(青葉市子、KanSano、山本達久)が生演奏し、俳優はダンスのようにテンポよく、ジャングルジムやワゴン車数台を登ったり降りたりする。舞台の一部をスクリーンに示す映像、そしてお馴染みの歌うようなセリフ回し、木枠を転がす装置もちらりと。
青柳が不思議な姿勢と饒舌で、全体を引っ張る。ほかに山中崇、松重豊ら。
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