風の吹く夢
THE SHAMPOO HAT第29回公演「風の吹く夢」 2014年9月
5月に「殺風景」を観た赤堀雅秋が作・演出する劇団公演だ。会話と人物造形に大人のペーソスがあり、随所に笑いも満載で、休憩無しの2時間弱をちっとも飽きさせない。哀しくほろ苦い暮らしににじむ、小さな希望。千秋楽とあってか、若者中心に通路まで超満席だ。ザ・スズナリの下手寄り前の方で4300円。
ストーリーは平凡な土木作業員たちの1日を、ロードムービー風に淡々と暗転でつないでいくだけ。五味(赤堀)は新入りの伊藤(日比大介)が冷蔵庫を持っていないと聞いて、別れた妻・典子(黒沢あすか、綺麗です)から古い冷蔵庫を貰おうとする。赤堀には破壊衝動の気配が濃厚だけど、特段の暴力沙汰は起こらない(赤堀作品では珍しいらしい)。あるのは過ぎ去った時間への後悔、謝ろうとして謝れない苛立ち、そして許すということ。行く夏の、夜なのに鳴く都会の蝉の声が染みるなあ。
贅沢なゲストをはじめ俳優陣がみな達者で、五味を取り巻く人物がいちいち個性的、かつリアルだ。大卒の作業員(池田成志)はクールなようでいて、妻(滝沢恵)と子供には滅法弱い。伊藤は終始ピントがずれており、その弟(駒木根隆介、ぐんぐん成長している印象)は絵に描いたようなニートで、ものすごく饒舌で面倒くさい。スナックのママ(なんと銀粉蝶)が、詩的に宗教を語って圧巻ながら、コミュニケーションは一方的。人のいい作業員仲間(児玉貴志)と、もつれた思いを発泡酒で解きほぐしちゃう典子の恋人(野中隆光)が泣かせます。
シンプルな木枠と簡単な椅子を組み合わせて、場面を構成。携帯を使って2人同時にしゃべるシーンが巧い。ブログをちらっと読むと赤堀さん、かなり苦労したみたいだけど、本当に良かったです。
それにしても男性の多い客席、よく笑ってたなあ。鈴木杏ちゃん、イキウメの浜田信也らの姿も。
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